宙に描いた文字を認識、指輪型デバイスで点検作業がペン要らずに:センシング技術(2/2 ページ)
富士通研究所は、工場やビルの点検といった用途向けに、重さが10g以下の指輪型ウェアラブル機器を開発した。空中に指で描いた文字を認識し、作業を中断しなくても数字などを入力できるようになっている。2015年中の実用化を目指す。
「Ring」との差異化は?
指輪型ウェアラブル機器には、日本発のベンチャー企業ログバー(Logbar)が販売している「Ring(リング)」などがある。同製品との最も大きな差異化ポイントは、NFCタグリーダーを内蔵していることだという。例えば、タグを読み取って作業内容をモニターに表示し、数字を宙に手書きしてメニューボタンを選ぶ、といった使い方を想定している。
バッテリーは、今のところは充電式ではなく、交換式。動作時間は、1500回のNFCタグリードと1500文字の手書き入力で、約8時間である。「電池を交換する方が充電するより速くていいという声もあり、充電機能を搭載するかしないかは、よく考えなくてはいけない。かなり頻繁にピッキング作業を行う現場で、1日に3000回のタグリードを行うといわれているので、1日分の動作時間としては大丈夫なのではないか」(富士通研究所)。
ウェアラブルなら組み合わせは自由自在
工場やビルなどの点検を行う現場では、ヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブル機器やクラウドの利用が注目されている。富士通研究所によると、作業現場、特にメーターを点検する現場では、手を離さなくても数字などのデータや文字を入力できる技術へのニーズが高いという。同社は、「だが、作業を中断しなくても数字やメモを簡単に残せる手段がない」と説明する。富士通研究所は2014年2月に、今回と同じように現場での作業支援を目的としたグローブ型ウェアラブル機器の技術を発表している。今回は、それを発展させて指輪型とし、空中に文字を描きやすくした。
ただし、現場によっては指になにも装着したくないという声もあるという。「その場合は、腕時計型のウェアラブル機器を利用する方法も考えられる。ただこの場合は空中での手書き入力が難しくなる。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、グローブ型、指輪型、腕時計型など、さまざまな形式の物を適材適所で使えるところがウェアラブル機器の利点である」(富士通研究所)。
富士通研究所は、実証実験と評価を進めながら2015年の実用化を目指す。同社は、指輪型ウェアラブル機器で、ヘッドマウントディスプレイに搭載したカメラを制御することも応用例として考えている。将来的には、指輪型ウェアラブル機器とヘッドマウントディスプレイだけを身に着けて、現場で作業できるようになる可能性もある。
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