中国スマホ市場でQualcommやBroadcomに試練か――下がる参入障壁、勢いづく地元企業:ビジネスニュース 業界動向(3/3 ページ)
目まぐるしく変化する中国のスマートフォン市場。中国最大の通信事業者であるChina Mobileが、スマートフォンに課す通信規格の対応数を減らしたことから、モバイル向け半導体を提供する中国メーカーが勝負しやすい状況になった。QualcommやBroadcomなどの米国大手半導体メーカーは、少なからず影響を受けるとみられる。
「中国メーカーは脅威ではない」――Broadcom
スマートフォン/タブレット市場で活躍する中国のファブレス半導体メーカーは、これまではアプリケーションプロセッサの開発に専念していた。こうした企業の製品ポートフォリオには、Wi-Fi対応/Bluetooth対応通信チップはなかった。
だが、DSPコアを中心としたIP(Intellectual Property)プラットフォームのライセンサーであるCEVAでマーケティング部門のバイスプレジデントを務めるEran Briman氏は、「こうした状況は変わりつつある」と指摘する。Actions SemiconductorやRockchip、Allwinner Technology、Spreadtrumといった中国のアプリケーションプロセッサベンダーはいずれも、モバイル機器やウェアラブル機器向けの通信チップを製品ポートフォリオに加えたいと考えているという。
CEVAは、中国国内向けの3G/LTE対応スマートフォンに搭載されているチップからロイヤルティーを得ている。だが、BluetoothとWi-Fi接続技術のIPベンダーであるフランスのRivieraWavesを買収したことで、同社の状況は大きく変わった。Briman氏によると、CEVAは2015年前半にベースバンド以外のライセンス提供を開始し、2018年まで着実なペースで拡大していく考えだという。
Bluetooth通信チップを、“安価だがあまり価値はないもの”として扱ってきた多くの業界関係者は、Bluetooth Low Energy技術に関わるライセンス提供や、関連企業のM&Aが活発になっていることに驚いている。Briman 氏は、「Bluetooth Low Energyが状況を一変させた」と語る。
Briman氏によると、現在、中国の多くのアプリケーションプロセッサベンダーは、中国のスマートフォンメーカーに独自の接続関連技術を提供できるよう、CEVAからIPコアのライセンス提供を受けて、接続技術の開発に意欲を燃やしているという。
CEVAはRivieraWavesのワイアレス接続IP技術を基に、IEEE 802.11acとBluetooth Low Energy以外にも、IEEE 802.11ah/802.11pやBluetoothの新バージョンなどに対応するIPコアの提供も目指す。
Wi-Fi/Bluetooth通信チップを武器にスマートフォン市場に切り込んだBroadcomのような米国の大手半導体メーカーにとって、こうした状況は大きな脅威になるのではないだろうか。
BroadcomのCEO(最高経営責任者)を務めるScott McGregor氏は、脅威とは捉えていないようだ。同氏は、「“最高の技術”と“最高に近い技術”との間には大きな差がある。ましてや“最高ではない技術”などは論外だ。接続機能に求められるのは、最高の技術である。市場価値を獲得するには、多くの機能を搭載した最高の製品を実現しなければならない」と自信をのぞかせた。
Broadcomは、Wi-Fi通信チップ市場に率先して参入していった。新しい仕様が策定される前に、最先端技術を搭載したチップを提供することで、高いシェアを獲得した。接続技術でBroadcomを越えるのはなかなか難しい。
だが、そのBroadcomもLTEモデム事業から撤退せざるを得なくなった。Qualcommの圧倒的な強さと、中国のファブレス半導体メーカーの台頭が主な要因である。モバイル機器向けの接続チップ市場の勢力図がどうなるのか、それはまだ分からない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- クアルコムの中国への投資戦略は正しいのか?
中国企業への投資に力を入れるQualcomm(クアルコム)。だが、一筋縄ではいかないようだ。中国は、国をあげて半導体業界を活性化させようとしていることもあり、Qualcommの投資額が微々たるものとみられている可能性もある。 - Qualcommが「中国はロイヤルティーを支払う義務がある」と主張
世界最大の携帯電話機向けチップメーカーであるQualcomm(クアルコム)と中国政府が特許料の支払いを巡って、にらみ合っているとようだ。 - 中国SMICとクアルコムが協業、両社にとっての利点は?
中国のファウンドリSMICとQualcomm(クアルコム)は、28nmプロセスのチップ製造で提携する。Qualcommのプロセッサ「Snapdragon」を製造する予定だ。今回の協業は両社にとってどのようなメリットがあるのだろうか。 - クアルコムの次世代SoC「Snapdragon 810」、20nmプロセスへの移行が勝負に?
Qualcomm(クアルコム)のモバイル機器向けSoCとして最新品種となる「Snapdragon 810」。多くの新しい機能を搭載し、プロセスも20nmを採用する。 - QualcommがARMサーバ市場へ
QualcommがARMサーバ市場へ参入するという。64ビットアーキテクチャである「ARMv8」と互換性のあるコアを採用したプロセッサを近々発表するとしている。