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「量子もつれ交換」を1000倍以上高速化――量子暗号の長距離化に向けて前進:有線通信技術(2/2 ページ)
情報通信研究機構は2015年3月、電気通信大学と共同で、量子情報通信ネットワークの基本操作である「量子もつれ交換」を従来の1000倍以上に高速化したと発表した。
1秒間に108回の量子もつれ交換
NICTでは、2013年11月に、通信波長帯超伝導光子検出器の大幅な高感度化(検出効率を30%から80%へ向上)に成功。さらに、2014年12月には、光ファイバー通信波長帯において、高輝度・高純度量子もつれ光を生成できる周期分極反転ポタシウムタイタニルフォスフェート(KTiOPO4)結晶を用いた独自の高純度かつ高速の「量子もつれ光源」を開発していた(関連記事:量子通信の実現へ、量子もつれ光の高速生成技術を開発)。
今回、これらの要素技術を統合し、さらに、2つの独立な量子もつれ光源から生成されたA-B間、B-C間の2組の量子もつれ光子対の光子を地点Bで極めて高精度で干渉させるための同期技術を確立。これにより、「従来の速度の1000倍以上に相当する、1秒間に108回の量子もつれ交換を行う装置の開発に成功した」(NICT)。
今回の開発成果により、これまで速度不足のため、原理実証にとどまっていた量子もつれ交換の実験を、光ファイバーネットワーク上での行うことが可能なるという。さらに、NICTでは、「量子もつれ交換は、長距離通信で起こる量子もつれの性質の破壊に対しその性質を回復する『量子中継』を実現するための最も重要な要素技術の1つとして知られ、今回の成果は、量子中継の実現に向けた大きな前進」としている。
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