プロ向け4K H.264/HEVCリアルタイムエンコーダ、NTTが1チップで実現:新技術
NTTは、1チップで4K/4:2:2/60p映像のエンコード処理を行うことができる、プロフェッショナル用途向けH.264/HEVC(High Efficiency Video Coding)リアルタイムエンコーダLSI(開発コード名:NARA)を開発した。
NTTは2015年3月、1チップで4K/4:2:2/60p映像のエンコード処理を行うことができる、プロフェッショナル用途向けH.264/HEVC(High Efficiency Video Coding)リアルタイムエンコーダLSI(開発コード名:NARA)を開発したと発表した。4K映像の伝送サービス、パブリックビューイング、マルチアングルTVなどの用途に向ける。
NTTの研究所で開発したNARAは、可変ブロックサイズに適応したフレーム間予測やフレーム内予測におけるハードウェアアルゴリズムを搭載している。具体的には、画面内で動きの大きい部分を検知して、適応的に広い探索範囲を実現する動き予測や、動き予測の途中で段階的にブロックサイズを絞り込み、演算量を抑える動き検索、映像の特徴を解析した上で事前に予測方向を絞り込むイントラ予測などの処理を行う。これらの圧縮符号化アルゴリズムを搭載することで、4K/60p映像のリアルタイムエンコードを1チップで実現することが可能となった。
NARAは、音声エンコーダ/映像音声のトランスポートストリーム(MPEG2-TS)への多重化処理機能も内蔵しているため、システム設計を容易にするとともに、高密度実装を可能とした。LSI化を図ったことで、既存技術によるHEVCエンコーダ機能モジュールに比べて、実装面積は従来の1/16に小型化することができ、圧縮性能を1.5倍に高めることが可能となる。
NARAは、放送局などが編集や生中継に用いる高品質映像規定「4:2:2フォーマット」映像に対応している。このフォーマットは、放送配信などで一般的に用いられている「4:2:0フォーマット」に比べて、2倍の色情報を表現することができる。このため、ライブイベントにおけるカメラ映像など、エンコードやデコードを複数回繰り返し行うような映像システムにおいても、色の劣化が起きにくいという特長がある。
NTTは今後、同LSIを搭載した装置を開発し、4K映像を使った伝送サービスの検証を行う。2015年度第3四半期(2015年10〜12月)以降にはNTTグループ会社より、同装置を市場投入していく予定である。さらにNTTは、同LSIを複数個用いることで、8K映像をリアルタイムエンコード処理することが技術的に可能なことも確認しているという。
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