台湾の干ばつが深刻化――半導体業界も水の確保に追われる:ビジネスニュース
台湾が深刻な水不足に襲われている。政府による給水制限が厳しくなる中、TSMCやUMCは、工場に水を配送する体制を整えている。
世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCをはじめとする台湾の半導体メーカー数社は、水不足がさらに深刻化した場合に備えて、工場に水を配送する体制を整えているという。
TSMCは、AppleやQualcomm、NVIDIA、MediaTekなど主要なエレクトロニクス企業に半導体を提供している。政府が給水制限を強化した場合、TSMCは新竹(Hsinchu)と台中(Taichung)、台南(Tainan)にある工場の稼働を維持するために、3トントラック180台を使って水を配送する計画だという。
TSMCの広報担当ディレクタを務めるElizabeth Sun氏は2015年4月10日(台湾時間)、EE Timesに対して、「われわれは、政府の決定に応じるしかない。政府がTSMCの製造工場への給水を週に2日止めることになれば、トラックによる水の配送を開始するつもりだ」と述べた。
だが、水をトラックで配送するには高額な輸送費がかかる。TSMCは、水不足に対応するために10年以上前から水の再利用を実施している。同社は現在、台湾国内にある工場で1日に9万トンの水を使用しているが、そのうち87%の水を再利用している。
TSMCと同じく台湾の半導体ファウンドリであるUMCも、水不足対策を講じている。
UMCのスポークスマンを務めるRichard Yu氏は2015年3月20日、「台湾政府が給水規制を強化した場合、サードパーティから水を調達して輸送するなどの手段を含め、最大20%までの公共給水の削減に対応できる用意がある。2015年に入ってからは、水の再利用率を従来よりも3%上げ、85%に高めた」とメールで述べていた。
給水制限は「ステージ3」へ
台湾政府は既に、水不足が最も深刻な地域において、給水制限を週に2日行う「ステージ3」の段階に入っており、1カ月当たり少なくとも1000トンの水を消費する企業に対して、最大10%の給水制限を実施している。
2014年10月〜2015年3月の台湾の降雨量は、政府が記録を開始した1947年以来最も少ないレベルにある。水資源局は、「向こう3カ月間、降雨量はさらに減少する可能性が高い」と予測している。
米国の市場調査会社であるIC Insightsによると、台湾は世界の半導体製造能力の約1/5を担っているという。台湾にはInnolux CorpやAU Optronicsといった液晶ディスプレイ(LCD)メーカーも多いことから、水不足による影響は大きい。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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