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ムーアの法則、その行方を聞く幾度となく覆される“終えん説”(3/3 ページ)

これまで何度となく“終えん説”が唱えられてきたムーアの法則だが、半導体業界は多大な労力でこの法則を維持している。今後、ムーアの法則はどうなっていくのか。業界のキーマンに、ムーアの法則の行方や、ムーアの法則の維持に関わる技術などについて話を聞いた。

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微細化を進める鍵――銅配線の開発者

 IBMのフェローであるBijan Davari氏は、まず、1990年代に銅配線を導入した自身の取り組みについて触れた。Davari氏は半導体技術の博士号を取得した後、1984年にIBMに入社した。当時の半導体プロセスは、1μm以上だった。

 Davari氏は駆け出しの頃、エンジニアたちと、バイポーラとCMOSの長所と短所を活発に議論していたと、Davari氏は振り返る。

 「当時、高性能チップはバイポーラ技術を用いてのみ製造できると考えられていたが、バイポーラの電力消費量はあまりにも大きかった。CMOSはより省エネである上、さらに多くの機能を統合できたが、スイッチング速度は遅かった。低電圧のCMOSはデジタル時計のような用途にしか使えないという議論もあったが、基本的には、われわれは、あらゆる高性能ロジックはCMOSで製造可能であるという考え方を提唱していた」(同氏)。

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Bijan Davari氏

 最終的には、IntelもIBMもCMOSへ移行し、これによって業界の方向性が決まることになった。

 IBMにとってCMOSへの移行とは、数十個のバイポーラトランジスタよりも1個のCMOSトランジスタを使ってメインフレームコンピュータを製造することを意味していた。

 単一プロセッサの性能は低下したが、IBMはシステム全体の性能を向上させる並列処理技術を開発した。CMOSは、面積とコストの両方を削減することに貢献した。Davari氏は、「結局、業界全体が高性能と低消費電力を求めてCMOSに移行した。それを見届けた後、私はIBMのフェローになった」と話した。

 1990年代初め、エンジニアたちは、最新のチップに必要な微細な配線において、課題に直面し始めていた。当時採用していたアルミニウム配線が限界となっていたのだ。IBMの研究者たちは銅配線の利点を説明したが、銅配線を用いるにはいくつかの製造技術が新たに必要となる。「銅はアルミニウムのようにエッチングできなかった」(Davari氏)。

 6つのチームが、絶縁、電気メッキ、研磨の技術を進歩させるべく取り組んだ。

 「われわれは、メインフレームを製造するラインのツールを変えなくてはならなかった。そこで失敗すれば、製品スケジュールに深刻な問題を引き起こしかねない。多くの製造装置メーカー、ツールメーカーの協力を得て、堅ろうな装置/ツールを実現した」(同氏)。

 ライバルであるIntelですら、Davari氏のチームを称賛した。IntelのBohr氏は、「歪みシリコンとhigh-k/メタルゲートを開発し、FinFETの製造を業界で初めて開始したのはIntelだが、銅配線についてはIBMの功績をたたえたい」と述べている。

【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】

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