回路技術の注目論文〜プロセッサ、メモリ、バイオの最新チップ:VLSIシンポジウム 2015 プレビュー(4)(3/3 ページ)
今回紹介するのは、高性能プロセッサ、16nm FinFETを適用した連想メモリ、1600万画素の3次元積層CMOSイメージセンサーなどである。プロセッサでは、クロック分配技術や、Intelの「Broadwell」に関する論文について説明があった。
1600万画素の3次元積層イメージセンサー
さらに、3次元積層型CMOSイメージセンサーに関する2件の開発成果を紹介した。1件は、TSMCが開発した800万画素(ピクセル)の低雑音イメージセンサーである。サンプリングを5回繰り返すことによって熱雑音とRTN(Random Telegraph Noise)を除去した。入力換算雑音電子数は0.66電子(rms値)と小さい。
もう1件は、オリンパスが開発した1600万画素の3次元積層型イメージセンサーである。400万8960個のマイクロバンプによって画素単位での3次元接続を実現した。撮像機能では、通常のグローバルシャッタ(全画素一括露光)モードの他、200万画素を1万フレーム/秒ときわめて高い速度で撮影する高速撮像モードを備える。
超高速無線LAN向け60GHzミリ波トランシーバ
この他、通信分野とミックスドシグナル分野で合計3件の注目論文を紹介した。最初の1件は、パナソニックが開発した60GHzのミリ波トランシーバである。IEEE 802.11ad/WiGig向け。マルチユーザによるアクセスが可能である。アナログとデジタルのハイブリッド型ビームフォーミングによって信号間の干渉を抑制した。
次の1件は、Broadcomが開発した高性能アナログディジタル(A-D)変換回路である。有効ビット数(ENOB)は13ビットと高い。バンド幅は5MHz。消費電力は3.16mWと低い。3ビットの連続時間型ΣΔ変調器を採用したSAR(逐次比較)量子化器を載せている。試作した回路のSFDR(スプリアスフリーダイナミックレンジ)は94dBと高い。製造技術は28nmのCMOS技術。
最後の1件は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校が開発した高速かつ低電力の有線通信等化器(イコライザ)回路である。40Gビット/秒で動作したときの消費電力は9.2mWと低い。波長分割多重方式の光ファイバ通信向け。製造技術は45nmのCMOS技術。
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