ルネサス作田会長「無事、取りあえず生き残れた」――成長は後任に委ねる:ビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの会長兼CEOを2015年6月に退任することを表明している作田久男氏。2014年度決算説明会席上で、ルネサス再建の陣頭指揮を採った過去2年間を振り返った。
「運が良かった」
作田氏は、「この2年間とにかく身を削ってでも生き残ることに全力を注いできた。常に一歩踏み外せば、“即、倒産”というようなタイトロープを渡るような感覚だった。(2014年度を終えて)生き残りという面では、7〜8割の部分は手の内に入ったという感じ。まだ、2〜3割程度、生き残るためのリスクは残るが、無事、取りあえず生き残ることができた」と過去2年間を評価した。
また作田氏は生き残りが図れた要因については「運が良かった。もしプラスに振れた為替が、マイナスに振れていれば、倒産していた。取りあえず生き残れた要因は、為替によるところが大きい」と振り返った。
成長には思い切った手が必要
ただ、作田氏は構造改革が完全には終わっていない点も強調する。作田氏は就任当初から経営目標として2016年度営業利益率2桁、粗利益率45%の達成を掲げてきた。営業利益率は2014年度に13%超に達し、表面的には目標達成となったが、「円安による為替効果と、(工場閉鎖、不採算製品事業からの撤退などに伴う)作り込み(による需要先食い)効果による利益押し上げ効果があり、そうした要因を除いた想定実力値では、まだまだ2桁の営業利益率を生む体力はないと個人的には捉えている」と引き締めた。
2015年度の業績見通しは、発表していないが、現状も売上高の約1割程度は非注力製品による売り上げであり、当面、減収傾向は続くものとみられる。実際、見通しを示している2015年度第1四半期は減収を計画している。作田氏が「勝ち残るためのステップ」と表現する売り上げ増を伴う成長フェーズの軌道に乗るまではまだ時間が掛かりそうだ。
作田氏も「有機的な成長だけでは、グローバル競争を勝ち残っていくことは難しく、かなり思い切ったパラダイムシフトが必要。どの企業でも難しいことだが、思い切ったパラダイムシフトができるリソースはルネサスにはない。ないことは、悲観することではないが、ないということを認識する必要はある」と成長していくには、事業買収など思い切った手を打っていく必要があることを指摘した。
石からソフト、システムへ
今後の成長は、自身も選出に関与したという、元日本オラクル社長の遠藤隆雄氏に委ねる。遠藤氏を後任に選んだ理由として作田氏は「勝ち残るためにはある程度年数が掛かる」という年齢的な要素と、「ルネサスは(デバイス単体の)石から、もう少しソフトウェア、システムベースにシフトする必要がある」としIT/ソフトウェア業界での実績の2点を挙げた。
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