ARMから見た7nm CMOS時代のCPU設計(16)〜次世代メモリへの期待:福田昭のデバイス通信(27)(2/2 ページ)
今回はSRAMの消費電力に視点を移す。CPUの電源電圧の低下に伴うSRAMビット不良や、待機時と動作時で大きく異なるSRAMの消費電力に焦点を当て、なぜ、次世代の不揮発性メモリ「スーパーメモリ」に期待がかかっているのかを説明しよう。
フラッシュメモリは低電力モバイルCPUに向かない
SRAMの待機時消費電力を低減する最も単純な方法は、電源電圧をオフにすることだ。もちろん、電源電圧をオフにする直前に、データを不揮発性メモリにコピーしておく必要がある。するといっそのこと、不揮発性メモリをキャッシュにしたくなる。
しかし不揮発性メモリの代表であるフラッシュメモリは、モバイルCPUのオンチップメモリには適していない。その大きな理由は、書き込みエネルギーが大きいことと、CMOSロジックとプロセスの互換性がないことである。フラッシュメモリはまた、書き換え回数に制限がある。このことは、応用範囲を限定する。
フラッシュメモリの書き込みエネルギーはロジックに比べると膨大で、1ビットのデータを書き込むためには100ピコジュール前後を必要とする。ところがCMOSロジックは、1万ゲートの消費エネルギーですら1サイクル当たりで5ピコジュール程度にすぎない。フラッシュメモリ1ビットの約20分の1以下である。
待たれる「スーパーメモリ」の登場
そこで期待がかかるのが、新しいタイプの不揮発性メモリである。この「スーパーメモリ(次世代不揮発性メモリ)」は、粗く言えばDRAMとNANDフラッシュメモリの「いいとこ取り」だ。メモリセル面積はDRAMなみに小さく、スケーリングが可能で、書き込み速度と読み出し速度はDRAMよりも高速で、ロジックとプロセスの互換性があり、電源をオフにしてもデータが残り、書き換え回数は無制限に近いことが望ましい。
このような「スーパーメモリ」が近い将来に実現するかどうかは分からないものの、候補は存在する。磁気メモリ(MRAM)技術や抵抗変化メモリ(RRAM)技術などである。これらのメモリ技術の進展に期待したい。
(次回に続く)
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