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あなたの知らない「音」の世界、体に起こる不思議な反応:新技術(5/5 ページ)
体に起こる自然な反応を利用して、聞こえに関するさまざまな情報を得る――NTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究成果だ。被験者の回答に頼らない新しい手法を利用した3つの研究成果を紹介する。
その場で耳の保護機能を測定
記者も耳反響放射のテストを受けてみた。ただ座っているだけのテストだ。まず耳栓付きのイヤホンを両耳にセット。次に左耳からときおり、ガリッという音が聞こえてきた。すると、音(Noise)が聞こえたときのみ、耳反響放射(OAE)の出力(縦軸)が下がっていた(図10)。
今回の研究が実証したのは、耳音響放射と騒音性難聴リスクに相関関係があること。図7からは保護機能の強さが分かる。図9の実験からは、耳反響放射(遠心性投射)の強さが分かる。2つのデータの相関を調べると、保護機能が強い人(横軸)ほど、聴力低下(縦軸)が生じにくいことが分かった(図11)。
NTTコミュニケーション科学基礎研究所による3つの聞こえに関する実験は、それぞれ独立している。それでも、共通した考え方に基づいているのだという。
「脳内の神経のメカニズムを知ること自体は重要だ。しかし、それだけでは、聞いた音をどのように個人が感じているかといった情報を外部に取り出すことはできない。応用につながらない。そこで、今回の3つの実験ではこれまでの研究者があまり調べていなかった、伝統的ではない手法を利用して、成果を得た」(古川氏)。
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