ファイル共有サーバへのアクセス、ソフトウェア追加で最大20倍高速化:通信技術
富士通研究所は、ファイルアクセスを高速化するデータ転送技術を開発した。開発したソフトウェアをサーバとクライアントにインストールするだけで、ファイル転送速度を最大20倍高速化することができるという。
富士通研究所は2015年6月、ファイルアクセスを高速化するデータ転送技術を開発した。開発したソフトウェアをサーバとクライアントにインストールするだけで、ファイル転送速度を最大20倍高速化できることを確認した。
今回開発したデータ転送高速化技術は、遠隔地からファイル共有サーバを利用する際のファイルアクセスをソフトウェアで高速化する技術である。遠隔ネットワーク上で複数のファイル名、ファイルサイズといった情報取得のために発生する通信を大幅に減らすことで、ネットワーク遅延の影響を低減することができるという。
まず、サーバとクライアントの両方に開発したデータ転送高速化のモジュールを設置する。サーバ側のモジュールは、複数ファイルを含む、フォルダのダウンロードが実行されていることを確認する。そして、ダウンロードする全てのファイルを一括してクライアントの代理で先読みし、先読みしたファイルはまとめてクライアント側のモジュールに転送する。これに対してクライアント側のモジュールは、ファイル共有クライアントからのデータ取得の要求にサーバの代理で応答する。これらの手順によって、ネットワーク遅延の影響を低減することができるという。
併せて、サーバ側モジュールでヘッダ部分を分離してから重複除去を行う技術も開発した。ヘッダが付加されてもデータが同一であれば、重複除去の効果が得られるという。
同社は、新たに開発したソフトウェアをシステムに実装し、社内で実証実験を行った。川崎の事務所に設置したファイル共有サーバに、九州の拠点よりアクセスする想定のネットワーク遅延を再現した疑似環境下で、1kバイトのファイル100個を含むフォルダを一括ダウンロードしたところ、従来に比べて最大10倍高速化できることを確認した。さらに、同一環境で10Mバイトのファイル1個をダウンロードしたところ、重複除去技術などを用いていない場合に比べて、最大20倍の高速化が可能なことも分かったという。
今回開発した技術は、既存のファイル共用システムに搭載することができ、2015年度中にもデータ収集・統合ソフトウェアの転送高速化機能として実用化を目指す。また、クラウドやサーバ仮想化環境、モバイル端末などにも適用することが可能なため、各種ネットワークサービスへの応用も視野に入れている。
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