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製品アーキテクチャの基礎(前編)勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(6)(1/5 ページ)

今回から、いよいよ製品アーキテクチャの基本に入る。ここでは、分かりやすいように、自動車産業におけるモノづくりを知ることから始めたい。その後、製品アーキテクチャの種類と概要を紹介する。そのうちの1つは、日本の電機メーカーが本来“得意だった”はずのものだ。

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 第5回では、真似(まね)されない技術として“組織能力”についてお話をした。今回は、第4回の図3:「モノづくり戦略論・産業論」(東京大学教授/東京大学ものづくり研究センター長 藤本隆宏氏)で示される“製品アーキテクチャ”について話したい(図1参照)。

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図1 製品アーキテクチャとは(第4回 図3より抜粋)

 今回は、「企業特有の設計情報の流し方のうまさ」についてお伝えする。具体的には、“製品アーキテクチャ”として、「製品・工程の設計情報のつなぎ方、設計思想」に関連するもので、2回に分けて紹介する。今回はその前編である。

学者は予見していた!? 今日の電機企業(筆者のアーキテクチャ論に関する所見)

 製品アーキテクチャに関する文献、記事は比較的多い。検索すれば、アーキテクチャ論に関する多くの情報を容易に見つけることができるだろう。したがって、今回、お話しする内容には一般論も含まれるかと思うが、考えていただきたいのは、アーキテクチャの違いや特性を知り、製品開発をしたところで出来上がった製品が売れるとは限らないということである。

 本コラムで最も伝えたいことは、

  • 「勝ち抜くための組織づくり」をどのように作り上げるのか(これは、本連載のタイトルにもなっている)
  • 組織能力をもっと重視し、これを高めるためには何をしなければならないのか
  • 意味的価値を高め、真似(まね)されない製品を市場に投入するためには、製品開発はどのような思想であるべきか、どのような機能をどのような構成で実現すべきか

である。

 これは、第1回で述べたように、現場をよく知らないマスメディアから「弱くなった日本の製造業」と言わせないためでもあるが、筆者自身がもっと現場はできるはず! と信じているからに他ならない。

 本コラムで何度も登場する大学の先生方は、製造業の開発現場に在籍したという人は少ない。もともとは経済学者など、経歴はさまざまだ。しかし、今の日本の製造業――特に電機業界の低迷については、先生方は既に10年以上前にそれをおおよそ予想していたと思えてならない。結果論でしかないが、仮に筆者自身が今も開発現場に身を置いていたら、「経済学者に開発現場の何が分かるのか?」と、おそらく聞く耳を持たなかっただろう。

 当社(株式会社カレンコンサルティング)は、これまでにいくつもの製造業、開発現場をはじめさまざまな部門の変革コンサルティングに携わってきた。その中で、開発工数やコストの削減はまず無理と言われ一蹴されてきたにもかかわらず、それらを難なく実現し、結果的にはヒット商品を生み出した、という組織をいくつも見てきた。こうした経験から、「表面的な強さ以上に、もっと深いところにある組織能力や企業体質に、実は強さの根源がある」ことが徐々に分かってきた。

 その一方で、強さの根源について、アカデミックな理論的説明がつかないというもどかしさがあった。ところが、この先生方の理屈(意味的価値、組織能力、アーキテクチャなど)を当てはめると、ヒット商品は偶然の産物ではなく、必然であったことが説明できるようになったのである。当社でもともと保有する知見やノウハウと照らし合わせると、これら組織能力の湧き出るメカニズムがよりくっきりと明確になってきたので、まさにそれを本記事にて皆さんにお伝えしたいのだ。

 余談だが、筆者自身は「物事には必ず原理原則があり、事象を起こすメカニズムがある」と常に考えている。したがって、経営や組織、プロセス、コミュニケーションなど、一見、関数や公式では示せないように見える複雑な事柄でも、それらの関係性をひも解くことには躍起になってしまう。

 一般に、他社の成功事例を真似て、自社でうまくいくことはそうそうない。数学のように、あらかじめ関数や公式があって、そこに変数を入れれば答えが出るわけではないからだ。企業やそこで働く社員の特性、価値観など変数は全て異なる上に、未知なる変数があるかもしれない。そのため、企業ごとに関数や公式を作ってやらなければならない。しかし、メカニズムが分かっているので、どういう関数・公式を作ればいいのかは、分かるのである。あらためて、先生方には感謝である。

 少々、脱線してしまったが、本題に戻ろう。

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