直径3.7mmのプラズマジェット、東工大が開発:3Dプリンタが内視鏡の新たな可能性を広げる
東工大の沖野晃俊准教授らは、3Dプリンタを用いて、小型軽量のチタン製大気圧低温プラズマジェットの開発/試作に成功した。直径は3.7mmで内視鏡にも組み込むことが可能だ。高強度なプラズマを安定的に生成できることも確認した。
東京工業大学大学院 総合理工学研究科の沖野晃俊准教授と神戸大学大学院 医学研究科の東健教授は2015年8月、3Dプリンタを用いて、チタン製大気圧低温プラズマジェットの開発/試作に成功した。小型軽量で、内視鏡への組み込みを可能にするとともに、高強度なプラズマを安定的に生成できることを確認した。
大気圧低温プラズマは、表面処理などの産業機器や内視鏡治療などの医療用機器としての応用が期待されている。ところが、従来はプラズマ生成部を機械加工で製造していたため、さらなる小型化や複雑な形状設計など構造的に限界があった。一般的な内視鏡の鉗子口は内径が約3.7mmであり、内視鏡にプラズマを組み込むためには、これよりも小さいプラズマ装置を作成することが必要となっていた。
放電部の小型化とプラズマの高強度化を両立
今回の研究では、金属の3Dプリンタを用いることで直径3.7mm、重さが3.5gという小型軽量のチタン製プラズマ生成部を試作することができた。試作品を用いて高強度なプラズマを安定に生成できることも確認した。3Dプリンタは、小型の放電電極の中に微細な水冷チャネルを配置するなど加工が自由に行えるため、放電部の小型化とプラズマの高強度化を両立することができたという。
アルゴンやヘリウムのプラズマの生成も可能
試作品では窒素プラズマのほかに、アルゴンやヘリウムのプラズマを生成することもできる。生成されるプラズマは室温程度の低温であるため、熱損傷なく生体に照射処理することが可能だという。
今回の研究成果を活用することで、従来の機械加工では製作が難しかった複雑な構造や屈曲した構造を持つさまざまなプラズマ装置の開発/製造が可能になるとみられている。なお、開発成果は、2015年7月31日に米国物理学協会(AIP)の学会誌「AIPアドバンス(Advances)」で発表された。
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