シャープ、米社と衛星通信向けアンテナ共同開発:液晶ディスプレイ生産ラインで製造
シャープは、米国Kymeta(カイメタ)が保有するmTenna技術をベースとして、衛星通信向けのフラット型アンテナを共同開発する。製造はシャープの液晶ディスプレイ生産ラインを活用し、2017年の実用化を目指す。
シャープは2015年8月19日、米国Kymeta(カイメタ)が保有するmTenna技術をベースとして、衛星通信向けに新方式のフラット型アンテナを共同開発すると発表した。生産にはシャープの液晶ディスプレイ製造ラインを活用できるという。2017年の実用化を目指す。
カイメタが開発したmTenna技術は、衛星と送受信するための回路を片側のガラス基板上に形成し、もう一方のガラス基板との間に、メタマテリアルと呼ばれる液晶のような材料を挟み込む構造である。メタマテリアルは印加する電圧によって状態を制御することが可能だ。これによって、電波を外部に放出したり、あるいは閉じ込めたりするような状態を作り出せる。この「放出」あるいは「閉じ込め」のパターンをソフトウェアで制御することで、電波ビームの飛び出す方向を制御することができるという。
mTenna技術を応用して開発するフラット型衛星アンテナは、衛星軌道からの距離や通信速度などによって、サイズは直径が20〜150cmと異なる。これに対してシャープの液晶ディスプレイ工場は、第8世代と呼ばれる2160×2400mmのガラス基板サイズまで対応している。必要なアンテナサイズによって、2.5世代(405×515mm)、3.5世代(620×750mm)、4.5世代(730×920mm)などのガラス基板に対応した工場で、効率よく製造することが可能である。
従来のパラボラアンテナは、衛星や受信側が移動する場合、送受信用アンテナの向きを変えて追尾する必要があった。これに対して、mTenna技術をベースとしたフラット型衛星アンテナは、メタマテリアルの状態を変えることで衛星の追尾が可能なため、アンテナは固定した状態で済む。このため追尾するための可動部分は不要となる。従来のパラボラアンテナと同等の送受信性能を実現しつつ、アンテナシステムの薄型/軽量化を可能としたことで、自動車や船舶、航空機など移動体への設置が容易になるとみている。
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