ダイエットへの欲望は“種存続の危機”に勝るのか:世界を「数字」で回してみよう(18)(8/8 ページ)
痩せすぎは出産リスクを高める可能性があると考えると、ダイエットとは、「種の存続を危機にさらす可能性のあるもの」以外の何物でもない気がします。それなのに、なぜ、現代人は「痩身=美しい」と認識するのか。今回は、読者の皆さまからいただいた10の仮説を検証したいと思います。
納得できる仮説はどれだ?
以上、「『痩身ダイエットは種の存続が危機にさらされる可能性ががあるのにもかかわらず、痩身が美しいと認識されてしまう理由』を合理的に説明する」、10の仮説をご紹介しました。
では最後に、冒頭の「私の『嫁萌え』」の発生原因として、この私自身が納得できそうな仮説をチョイスしてみたいと思います。
(真面目に検証したのは、【仮説9】だけですが)、やはり、私の『嫁萌え』は、私の嫁さんに対する愛とは別の次元で ―― 遺伝子レベルで仕組まれていて、私の感情とは別に、本能的に ―― 発生した、と考えて問題なさそうです。
どこまでが「愛」で、何をもって「本能」と呼ぶか、それは大変難しいテーゼとは思いますが、私としては、一応納得のできる仮説を手に入れることができて、十分に満足しています。
今回の「仮説」の募集に応じていただいた方に、この場を借りて御礼申し上げます。
読者の皆さんにおいては、飲み会での話題の1つとして、楽しんでいただければ幸いです。
では、最後に少しだけ、次回の内容に触れておきたいと思います。
以前、担当のMさんから、
『女性は太る時には、ウエストから大きくなり、足、顔、そして最後にバストが大きくなります』
『しかし、ダイエットをすると胸から小さくなっていき、最後にウエストが細くなるのです』
とのメールを頂いたことがあります(嫁さんからも同じ話を聞きました)。
また、今回、多くの女性の皆さんのアンケート結果からも、
- ダイエットは、体重を減らすことではなくて、「理想のスタイル」を実現することであり、
- ダイエットは、その「理想のスタイル」を叩き壊す方向で、進行する
―― つまり『減らしたくない部位(バスト)を優先的に減らし、増やしたくない部位(ウエスト)を優先的に増やす
と考えられていることが分かってきました。(そして同時に、男性にはそのビジョンが絶無であることも)。
次回、この「部分痩せ」の可能性について、数字で回してみたいと思います。私は、これらの数値を眺めているうちに、「部分痩せ」や「部位ごとに太る/痩せる順番」などについては、ある種の「数字の錯覚」があるのではないか思い始めています。
―― でも、もう、仮説は言わない。
「締切直前に、『自分の仮説に裏切られる』という恐怖」は、もうコリゴリですから。
では、また来月お会いしましょう。
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Profile
江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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