プログラム可能な5G向けアーキテクチャ:Nokiaが発表
5G(第5世代移動通信)向けの技術開発に力を入れるNokia Solutions and Networksは、次世代ネットワーク向けにプログラム可能なアーキテクチャを発表した。ほとんどの機能が自動的にソフトウェア定義され、ほぼ全てのネットワークに、必要とされるコンテンツと処理能力が割り当てられるという。
現在のところ、5G(第5世代移動通信)の標準化はまだ開始されていない。しかしNokia Solutions and Networks(以下、Nokia)は、2015年9月9〜11日の日程で米国ネバダ州ラスベガスで開催されている移動体通信業界の大規模イベント「CTIA Super Mobility 2015」において、次世代ネットワークに向けた、プログラム可能な5Gアーキテクチャを発表した。既存の携帯ネットワークに自動的に適応することにより、低遅延と高信頼性を実現するという。システムコンポーネントの大半は、Nokiaが手掛けたものだ。
Nokiaの5Gネットワークでは、ほとんどの機能が自動的にソフトウェア定義される。同社の発表資料によると、ほぼ全てのネットワークに、必要とされるコンテンツと処理能力が割り当てられるという。
SONがベースに
Nokiaのシステムは、自己管理ネットワーク(SON:Self-Organized Network)をベースとして、以下の5つの機能を提供する。
- ネットワークスライシング:複数の独立型/専用の仮想化サブネットワークによって、レイテンシや信頼性、スループット、モビリティなどの要件が全く異なるさまざまなサービスを提供する
- DEM(Dynamic Experience Management):ネットワーク負荷が高い状況下でも、リソースの使用を最大で30%低減することによって、優れたユーザーエクスペリエンスを提供する
- サービスに応じてコネクティビティを決定(Service-determined Connectivity):ポイント・ツー・ポイントIP接続を1つだけ使用するのではなく、実際のサービス需要に応じて、接続パスを自由に選択することができる
- 高速トラフィック転送:分散型Telco Cloudを利用することにより、自動車分野や工業分野などに向けた次世代のクリティカルサービスをサポートする
- 需要に応じたモビリティ:ユーザー全体の70%は、モビリティユーザーではないため、モビリティサポートを必要としていない。真のモビリティユーザーは全体のわずか30%であることから、ネットワークリソースをもっと効率的に使用できる可能性がある
Nokiaの発表資料では、「ユーザーエクスペリエンスの質が大幅に向上したり、瞬時の応答や堅固なコネクティビティが実現することによって、製造業から自動車、ヘルスケアなどに至るさまざまな産業分野のビジネスプロセスを変化させることになるだろう。NaaS(Network as a Service)ビジネスモデルをベースとすることにより、あらゆる種類の産業に向けてさまざまなネットワーク機能を提供できるようになる」とされている。
10Gビット/秒の高速通信を実現
Nokiaは2015年初めに、同社のネットワーキング関連のロードマップの一環として、10Gビット/秒を実現したデモを披露している*)。同社の5G関連の研究開発では、70G〜80GHz帯をターゲットとし、2×2 MIMOを用いることで、遅延を100μsに低減したという。
*)関連記事:スモールセル向けORIは“使える規格”――富士通
大規模MIMO(Massive MIMO)を採用してトラフィック密度を最大化しながら、干渉を最小化するには、さまざまな困難が伴う。Nokiaの無線システムリサーチ部門を率いるPeter Merz氏は、「信号ビームを生成・制御するための数百個もの超小型アンテナを制御する方法や、チップスケール設計を用いてトランシーバをどのように準備するのかなど、今後も取り組むべき研究課題は多い」と述べている*)。一方で、Nokiaのエンジニアたちは現在、8〜16基のアンテナを用いて、LTE向けMIMOの開発に取り組んでいるという。5Gでは、約250基ものアンテナを使うとみられる。
*)関連記事:5G規格策定は今冬に開始、ようやく一歩前進
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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