1人の男が挑戦する“スマートホーム”の答え探し:リノベる「Connectly Lab.」(3/3 ページ)
マンションなどのリノベーションを行うリノベるは2015年9月、スマートハウスのショールーム「Connectly Lab.」をオープンした。世界中のスマートデバイスが集まる同ショールームで、開設したきっかけやその狙い、今後の展望を聞いた。そこには、ある1人の男の挑戦があった。
木村氏の入社でコンセプトが変わる
Connectly Lab.は最初の構想時点で、IoTデバイスのあるショールームができる予定だった。IoTデバイスのあるショールームから、現在のスマートハウスラボのようなコンセプトへと変化したのは、2015年5月に同社に転職した木村氏の影響が大きい。
「最初の構想が考えられたとき、私はちょうど営業マネジャーの候補として、同社の面接を受けている途中でした。その話を面接で聞いたときに『趣味でIoTデバイスを作っている』と話したことが、私の“職種”が変わるきっかけになりました」(木村氏)
木村氏は、以前の職場で営業マネジャーとして働きながら、センサーとマイコンを活用し、会議室にどの時間に人がいるかどうかを感知するデバイスを個人で作っていた。当時のことを、「会社の会議室が予約されているのに使われていないという課題があったので、そういうの作ろうかなあと思って」とさらっと話すが、エンジニアではなかった木村氏はゼロから本を読み勉強したのだという。勉強した内容をメモのような形で書いていたブログを、採用担当者が読んだことから木村氏の“職種”が変わることになった。
営業マネジャーの予定から新規事業チームの配属が決まった木村氏は、入社する2015年5月より前から構想を練り、スマートデバイスの選定やオープンまでの設計を中心的に行った。入社から約4カ月という早さで、Connectly Lab.のオープンまで至っている。
日本をスマートハウスの発祥地に
Connectly Lab.の今後の展開として、「2016年に何らかの形でアプリを提供したい」と木村氏は語る。2016年は、複数の家電を操作できるといった機能しかないかもしれないが、2019年には一般的な家庭でも使用できる形でアプリを提供する予定としている。
「2019年に実現したいのは、“家のアプリケーション”。現在のアプリは、スマートフォンで新しくダウンロードして、アイコンが出てきて使用できる。そのように、家にもどんどん新しい機能を追加できる状態にしたい。家に入ったら勝手に照明がつくとか、家の前を誰かが通ったらカメラで撮ってくれるとか。そのような機能を新しくデバイスを買うのではなく、ソフトウェアで追加できる状態を実現したい」(木村氏)
Connectly Lab.が抱える課題も多くある。1つ目は、ハードウェアは多く集まっているが、ソフトウェアが集まらないことである。スマートデバイスのAPIを公開し、開発できる環境も整えているが、思っているより開発者が集まっていない現状がある。「リノベるのメリットにならないと、Connectly Lab.で開発してはいけないのではないか」(木村氏)といった抵抗感が開発者にあるという。「開発者やアプリメーカー自身の収益のためでもいいので、どんどん開発してほしい」と木村氏は語る。
ビジネス的な課題もある。Connectly Lab.のスペースを活用したビジネスは考えていないとしているが、今後はアプリのプレミアム会員制やスマートデバイスから得られるビッグデータを活用した形を考えているという。また、家に設置される家電の多くにはディスプレイが搭載されているため、そこに広告を出すことも考えているとしている。
最後に、木村氏にConnectly Lab.での野望を聞くと、「スマートハウスを日本から世界中に広めること。PC、スマートフォン、自動車も海外メーカーの存在が大きくなっている。じゃあ、スマートハウスの発祥といったら“日本”にしていけたらと。そのために、Connectly Lab.に集まる皆でスマートハウスの形を創ってきたい」と語ってくれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 洗濯物を自動で畳む! その名も“ランドロイド”
洗濯物を全自動で洗って乾かす。珍しくも何ともない、日常的な風景だ。だがもう間もなく、洗濯物を「畳んで仕分けて収納する」までも全自動でできる家電が登場するかもしれない。 - スマートホームは半導体業界を救えない?
半導体業界の次なる“けん引役”をスマートホームに期待するのは、だいぶ早いようだ。GoogleやSamsung Electronicsなどが投資している分野ではあるものの、多くの一般消費者は、スマートホームの設定や接続がうまくいかずに諦め気味になっているという。 - 2030年までに“世界一スマートな都市”を目指すドイツ
ドイツは、“世界で最もスマートな都市”の実現に向けて取り組みを始めている。あらゆる建物に太陽電池を取り付けるなど、“自給自足”できる都市を作るべく、さまざまな分野の技術の統合を図っていく。 - iOSで作るスマートハウス、AppleのIoT戦略
次期iOSとなる「iOS 8」には、スマートハウスを構築するための機能「HomeKit」が追加される。スマートハウスにはGoogleも乗り出しているが、Appleは、IoT(モノのインターネット)機器に「MFi」認証を与えることで、Android勢よりもスマートハウス向けネットワークを構築しやすい環境を整えようとしている。