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DVDプレーヤーで考える標準化と市場価値勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(9)(2/2 ページ)

「標準化」は、技術が世の中に広く普及するためのすべとなり、やがてはその技術を開発した企業に利益を生み出す。かつての日本メーカーは、革新的な技術を国際標準化してしまえば、それが利益につながると考えていた。だが、そうではなかったのである。

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イノベーションとグローバル競争力

 第1回にて述べたように、従来、我が国の製造メーカーは、何かしらの技術的なイノベーションの存在は、グローバル競争力に直結するものと考えてきた。そのために、企業は顧客や市場の潜在ニーズを引き出し、このニーズを満たす製品を開発すれば、売れる製品となり、世の中に大量普及する。しかるに、企業の利益につながる。単純に言い切ってしまえば、このような“希望的観測”のもとに製品戦略、事業戦略がなされてきた。

 したがって、従来のパラダイムである“希望的観測”の延長線上で考えると、「国際標準化」の推進は、我が国のイノベーションの賜物である技術を備えた製品を市場に投入すれば、やがては自社の企業利益を生み出す…このように考えていたと言っても過言ではないと思われる。東芝が、まさにイノベーション満載であったDVDプレーヤーの内部仕様・アーキテクチャの公開にいち早く踏み切り、標準化を推進したことの背景には、自社の売上・利益に多大に貢献すると考えたとしても不思議ではない。ところが、その目論見どおりにはいかず、アジア諸外国にやられてしまったのである(第7回参照)。

製品アーキテクチャと市場への普及速度

 製品標準化には、製品アーキテクチャの「モジュラー(組合せ)化の加速」と、モジュラー型へのアーキテクチャ展開は、グローバル市場に迅速に普及をする。

 これらは結果的に、アジア諸外国の経済活性化に大きく寄与することになった。

 製品アーキテクチャが、「インテグラル型(擦り合わせ型)からモジュラー型(組合せ型)の加速」にシフトすることで、製品標準化…とりわけグローバル市場における標準化には大きく貢献したのがだが、結果として、日本以外のアジア諸外国の経済活性化を促進することとなったのである。

 次回は、製品アーキテクチャの観点から、今回取り上げた事例をより掘り下げて、市場や価値についてお伝えしていく。


Profile

世古雅人(せこ まさひと)

工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。

2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱。技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。2012年からEE Times Japanにて『いまどきエンジニアの育て方』『“AI”はどこへ行った?』などのコラムを連載。

一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)で技術系ベンチャー企業支援と、厚生労働省「戦略産業雇用創造プロジェクト」の採択自治体である「鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト(CMX)」のボードメンバーとして製造業支援を実施中。


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