次世代ミリ波レーダー用IC、チップセットで提供:技術革新でコストダウン、世代ごとに3割削減(3/3 ページ)
インフィニオン テクノロジーズは、車載レーダーシステム向けチップセットを2019年より市場に投入していく計画である。Gen 3と呼ぶ次世代製品では、77GHzミリ波レーダーチップに加えて、MCU(マイクロコントローラ)や電源ICも同時に供給していく。
対象物との距離も検知するイメージセンサー
将来の自動運転システムに欠かせない技術の1つがドライバモニタリング技術である。この用途に向けて、インフィニオンは3次元イメージセンサーチップ「REAL 3」を供給する。REAL 3は、赤外光がカメラから被写体までを往復する時間を測定するタイムオブフライト(ToF:Time of Flight)の原理を用いて開発されたチップである。複雑なアルゴリズムを用いた処理を行うことなく、単眼カメラで被写体までの距離も測定することが可能である。測定できる距離は、測距用に用いるLED光源の出力によって異なるが、車内用途であれば1m程度だという。
ダイナミックレンジが広いのもREAL 3の大きな特長である。太陽光が強く、ドライバの顔に影ができるようなケースでも、ドライバの顔の位置や向き、瞬きなどを検出/認識することができる。低照度にも強いという。画素数は10万画素である。すでに産業分野ではロボットや監視カメラなどの用途で採用されている。ADAS向けでは、Leopold KostalがREAL 3を用いた3次元カメラシステムを開発中である。ドライバが眠気の兆候を示していたり、注意力が低下したりした時に、その挙動を検知するシステムである。必要であれば警告音などを発して事故を未然に防ぐことができる。
日本市場でもミリ波レーダーシステム向け事業がけん引
日本市場での取り組みについても語った。センサー事業は日本市場でも注力している分野である。Bornefeld氏は、「他地域に比べると、日本の自動車メーカーはバックモニターや自動ブレーキシステムにカメラシステムを搭載している比率が高い。一方で、ミリ波レーダーシステムに関心を持つ自動車メーカーも少なくない。日本は人口密度が高くミリ波レーダーシステムをうまく活用できる市場でもある。5年後にはミリ波レーダーシステムも大きな市場となるだろう」と分析する。
インフィニオンの日本法人では、今後の5年間で年平均成長率15%の売上高成長を見込んでいる。その中で、ミリ波レーダーシステムなどのセンサー事業が高い成長をけん引していくと期待する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- インフィニオン車載用チップが20台に1台搭載へ
インフィニオン・テクノロジーズは、同社の高周波レーダーチップの出荷個数が1000万個を突破したことを発表した。最大250mの範囲で物体を認識できる77GHzのチップで、2016年には自動車の20台に1台が、同チップを採用した運転者支援システムを搭載するという。 - パナソニックとインフィニオン、GaNパワー半導体で協業
パナソニックとインフィニオン テクノロジーズは、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを共同開発することで合意したと発表した。 - インフィニオンとUMCが関係拡大、車載向け130nmパワー半導体製造で合意
Infineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)とUMC(United Microelectronics Corporation)は、車載用途向けパワー半導体の製造委託で合意した。インフィニオンの車載用途向け130nmプロセス技術「SPT9」を用いて設計されたパワー半導体を、UMCの300mmウエハーファブで2018年前半より量産を開始する。 - 日本でも3位に躍進! 車載半導体世界シェア首位を目指しルネサスを追うインフィニオン
インフィニオン テクノロジーズ(Infineon Technologies)は、“クリーン”“セーフティ”“スマート”の3つをターゲットにし、世界車載半導体市場で世界トップを目指す。これまで、地元欧州などと比べ、比較的低シェアで推移してきた日本市場でも急速にシェアを拡大させており、世界車載半導体首位をいくルネサスを世界規模で追う構えだ。