デジタル化で変わりゆく自動車業界:成功の鍵はクルマそのものではなくサービス
ドイツのコンサルティンング会社によると、デジタル化は、自動車業界のビジネスモデルを根本的に変えるという。自動車そのものよりも包括的なサービスの質が問われることになるとしている。
自動車業界の意思決定者は、ドイツのコンサルティング企業Kugler Maagによる調査結果に注目すべきである。この調査では、デジタル化が自動車の開発プロセスとビジネスモデルを根本的に変えるという。
主な課題として、IT分野で起きたのと同様に、ビジネスモデルや思考が、製品(つまり自動車そのもの)志向からサービス志向に移行することが挙げられる。クラシックカーにさえも同じ課題が待ち受けているようだ。
Kugler Maagは42人の経営幹部に聞き取り調査を行ったが、彼らは共通して「デジタル化の技術は、企業の成功を決める要素になる」と考えている。
この調査は、BMW Car IT、Bosch、Fraunhofer SIT、スイス サンクトガレン大学が協力した研究プロジェクト「Scalare」に関連して実施された。調査では、「デジタル化技術は企業レベルでどのように形成されるのか」や、「企業は、デジタルに関する知識をどのように社員に身に付けさせるのか」といった点が検証された。
ネットワークを、より重視するビジネスモデルにシフト
デジタル化は、ビジネスモデルを何十年もかけて確立し、改良を重ねてきた自動車業界にとって、今後ますます大きな課題となるだろう。その上、Kugler Maagの調査によると、同業界のバリューチェーン構造はネットワークをより重視するビジネスモデルに置き換わるとみられる。
ネットワークは、ITやインターネットプロバイダー、レンタカー業者、自動車メーカーといった異なる種類のベンダーやプロバイダーを統合するようになる。このようなパラダイムシフトは「人々の活動の中心にあるのはもはや自動車ではなく、モビリティを巡る全体的なサービスである」という事実にも現れている。過去数十年にわたり、顧客につながるインタフェースはディーラーのショールームだったが、今後はIT企業やサービスプロバイダーに移り変わる可能性がある。
未来の自動車業界における最も重要な経営能力の1つとして、開かれたパートナーシップを築く能力が挙げられる。自動車はその役割を変え、IoT(モノのインターネット)のインタフェースになる可能性がある。そのため、ビジネスモデルはデジタル経済にマッチするよう管理される必要があるとKugler Maagは指摘している。収入源は製品からサービスに移行する他、サービスのイノベーションは技術部門よりもむしろ他社との協業を通じて創出されることが多くなるという。
重心が製品からサービスへとシフトすることで、広範囲にわたり影響が及ぼされるとみられる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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