万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”:世界を「数字」で回してみよう(22) ダイエット(4/10 ページ)
ダイエッターの心を蝕む最も大きな要素の1つに、「停滞期」があります。実際、停滞期から抜け出せずに挫折してしまったという方もいるのではないでしょうか。今回は、私たちダイエッターを悩ます“停滞期の正体”を、「超シンプル体重シミュレーション」という、エンジニア的な視点で探ってみましょう。
運動は、減量に効果なし!?
平成横浜病院でのインタビューの話に戻ります。
江端:「食事による摂取カロリーに対して、個別の運動(歩く、走る、階段を上る)の消費カロリーは、恐ろしく小さいようです。これでは『ダイエット(体重を減らす)には、運動の効果はない』という結論になってしまうのですが……」
これは本当の話です。実際に電卓をたたいて調べた時、私はかなりのショックを受けました。
寝た切りの状態ダでダラダラしているだけでも、毎日10時間弱ぶっつづけで歩き続けるのと同量のエネルギーが消費されてることもショックだったのですが(何もしなくても、生きているだけで膨大なエネルギーが必要)、毎日のジョギング(30分)は、たった1個のコロッケで「なかったこと」にされてしまうことは、もっとショックでした。
――うん。 私なら、2個のコロッケを1個にして、朝のジョギングをやめるな
早朝ジョギングなどして、お腹を減らして帰って、2個のコロッケを3個にしてしまったら、本当のバカです。
先生たちは、うなずきながら私のこの「コロッケ論」に聞き入り、その後、おもむろに語り始めました。
「江端さん。これは、本当に、真剣に、心から、読者の方に強く訴えかけて頂きたいのですが」、と前置きされた後、言いました。
「減量の効果は、『運動だけ』では全く期待できません」
(言い切ったぁーーーーーー)と、私の心の中の驚きの声を知ってか知らでか、先生は続けられました。
先生:「ご存じでしょうが、『ダイエット』とは減量のことだけではありません(「人類は、“ダイエットに失敗する”ようにできている」参照)。ダイエットの本来の意味は、『食事療法』です。適正な身体のパラメータ(血圧・血中脂質・血糖値・肝機能障害・尿酸値など)を戻すことも含めて、本来の『ダイエット』の範ちゅうです」
―― 例えば、体重を減らすだけであれば、食事を止めて、お菓子だけ食べていても達成は可能ですけど、これは、ダイエットじゃないですよね ―― と、笑いつつ、
先生:「しかし、運動は、身体の健康を示すパラメータの改善に大きく貢献するのです。これが『運動が(前述の定義に基づく)ダイエットに良い』という本来の意味です。江端さんが計算された通り、『運動』は減量に有効な手段とは言えません」
江端:「ということは、やっぱり……」
先生:「そうです。減量に最もダイレクトに効いてくるのは摂取カロリーを制限すること。つまり『食事の量を減らすこと』と、そして、『その減らした食事の量を、ずっと維持し続けること』です」
そして、この話は、冒頭の「ライザップ」の話につながっていくのです。
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