パッチ式脳波センサー、冷却シート感覚で装着:認知症の簡易検査が自宅などでも可能に
大阪大学の関谷毅氏と金沢大学の菊知充氏を中心とする医脳理工連携チームは、パッチ式脳波センサーの開発に成功した。いつでもどこでも脳状態を計測し、リアルタイムに可視化できる。認知症の簡易検査を自宅で行うことも可能となる。
大阪大学産業科学研究所の教授を務める関谷毅氏と、金沢大学こどものこころの発達研究センター教授の菊知充氏を中心とする医脳理工連携チームは2016年1月、パッチ式脳波センサーの開発に成功したことを発表した。自宅などでも認知症の簡易検査を容易に行うことが可能となる。
今回開発したパッチ式脳波センサーは、柔軟な電極とシート型ワイヤレス計測モジュール及び小型電池からなる。形状は手のひらサイズで厚みは6mmと薄く、重さはわずか24gである。生体適合性のある密着性ゲルを採用したことで、額に冷却シートを貼るような感覚で、容易に装着することができ、リアルタイムに脳状態を可視化することが可能となる。その上、これまで脳波測定に用いてきた大型の医療機器と同等の計測精度を実現しているという。
脳波を計測するためこれまでは、ケーブルでつながれた複数の電極を頭部全体に装着していた。しかも、導電ゲルを頭皮に塗布する必要があった。このため、装着者への負担も大きく、特に子どもの脳波計測は極めて難しかったという。新開発のパッチ式脳波センサーはこうした計測時の課題を解決した。
さらに開発プロジェクトでは、額で計測した脳波データのみで、アルツハイマー型認知症患者と健常者の脳活動の違いを区別できることも突き止めた。開発したパッチ式脳波センサーを利用すれば、高度な医療機器や医療用脳波計などが設置できない、家庭やかかりつけの医院、介護施設などにおいて、認知症の簡易検査が可能となるため、早期発見につながることを示した。
大阪大学COI(Center of Innovation)拠点は、科学技術振興機構(JST)のCOIプログラムによる支援の下、医学、脳科学、理学、工学が連携(医脳理工連携)して、脳機能を明らかにすることで、人間が持つ感情やストレスなどとの因果関係を解明する研究を行っている。これらの成果に基づいて、人間のさまざまな状態に応じた活性化の手法を開発し、社会に提供する脳マネジメントシステムを開発していくプロジェクトである。なお、大阪大学COI拠点では金沢大学、パナソニックなど11機関、25企業が共同研究を行っている。
今回の開発成果については、ウェアラブルEXPO(2016年1月13〜15日、東京ビッグサイト)の展示会場で、技術の詳細を発表する予定である。
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