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電気を通すラップの開発に成功タッチパネルが紙のように折り畳み可能に

産業技術総合研究所(産総研)は2016年1月、電気を通す透明ラップフィルムを開発したと発表した。生鮮食品用の包装フィルムの他、曲面状のものにセンサーを実装できるという。

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 産業技術総合研究所(以下、産総研)は2016年1月、トクセン工業と共同で、電気を通す透明ラップフィルムを開発したと発表した。産総研は、トクセン工業が開発する金属ワイヤを2枚の柔軟なフィルムの間に波状に形成するプロセスを開発。このプロセスにより、高伸縮性/透明性/電気的安定性/強靭性を同時に満たす導電性ラップフィルムを作製できるという。同透明ラップフィルムは、生鮮食品用の包装フィルムの他、タッチパネルやウェアラブル端末における曲面状のものにセンサーを実装できるという。

 なお、同透明ラップフィルムの技術的な詳細は、2016年1月27〜29日に東京ビッグサイトで開催されている「プリンタブルエレクトロニクス 2016」で発表される。


導電性透明ラップフィルムにLEDを接続して、イチゴの包装フィルムとして用いた例。現行の食品用ラップフィルムと同等の透明性と柔軟性を持つ導電性フィルムを実現したという (クリックで拡大) 出典:産総研

高い弾性の線材を用いる必要

 同導電性ラップフィルムは、2枚の柔軟なフィルムの間に細い金属ワイヤが波状になるようにはさみこんだ構造となっている。産総研は、「柔軟なフィルム間に極細金属ワイヤを波状に形成するとき、極細金属ワイヤのヤング率(弾性係数)が、形成される波状ワイヤの形状に強く影響することが分かった」と語る(図1、2)。


図1:線材の弾性係数と波状ワイヤの波形の関係。伸縮により破断しないためには、高い弾性の線材を用いる必要があるという (クリックで拡大) 出典:産総研

図2:2枚の柔軟フィルム間に形成した波状の極細金属ワイヤの形状の顕微鏡写真。高弾性のワイヤとして線径9μmのピアノ線、低弾性のワイヤとしては線径30μmの銅線を用いた比較となっている。高弾性ワイヤは波の頭頂部の曲率半径が比較的大きい。しかし、低弾性ワイヤでは曲率半径が小さくなってしまい、繰り返し伸縮すると頭頂部で金属疲労が起こり断線してしまう。この結果から、極細金属ワイヤとして弾性の高いピアノ線を用いたため、波状ワイヤの頭頂部の曲率半径を大きくでき、伸縮する際にも金属疲労が起こらず、断線に強い高伸縮性の導電性ラップフィルムが作製できたという (クリックで拡大) 出典:産総研

ハンマーで叩打しても断線しない

 同導電性ラップフィルムの特長は3つある。柔軟性/透明性、電気的安定性、強靭性だ。今回用いられている線径9μmのピアノ線は、目で認識することは難しく十分な透明性が確保されている*)。また、ワイヤを波状に配線しているため、伸縮時にも長さは変らず、原理的に電気抵抗(電気抵抗は配線の長さに比例)は変化しないという。これにより、LED用の配線として波状ワイヤを用いた場合、フィルムを伸縮したとしてもLEDの発行輝度は変化しないとした。ピアノ線は非常に強靭であるため、導電性ラップフィルムを折り畳んで、ハンマーで叩打しても断線しないといった特長も持つ。

*)産総研は、「視力1.0の人が30cmの観察距離で認識できる物体の最小サイズは、50〜100μm」とした。

左=今回発表した導電性透明ラップフィルムの特長/右=導電性透明ラップフィルムに静電容量変化検出回路を接続したタッチセンサー。極細金属ワイヤが配置されている場所に触れると、静電容量が変化し、触れたことが検出できているのが分かる (クリックで拡大) 出典:産総研

 産総研は今後、製造プロセスの効率化で量産体制を確立し、同フィルムを用いた曲面タッチパネルやウェアラブルセンサーなどへの応用を目指していくとしている。

 産総研の吉田学氏は、「今回発表した技術は強靭性を持つため、タッチパネルでは、紙のように折り畳み可能なものができると考えている。従来も折り曲げ可能なタッチパネルが発表されているが、曲率半径を小さくしてしまうと導電体にダメージがあり、紙のように折り畳むことはできなかった。ウェアラブルデバイスに関しても、柔軟性や透明性を利用して、衣服の表面や内側にセンサーが実装可能になるだろう」と語る。

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