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可視光全域の波長をカバー、世界初の標準LEDLED照明や有機EL照明の性能向上に一役

産業技術総合研究所の中澤由莉研究員らは、日亜化学工業と共同で、可視光全域で十分な光強度を持つ標準LEDを開発した。

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 産業技術総合研究所(以下、産総研)物理計測標準研究部門 光放射標準研究グループの中澤由莉研究員、丹羽一樹主任研究員、神門賢二主任研究員らは2016年2月、日亜化学工業と共同で、可視光全域で十分な光強度を持つ標準LEDを開発したと発表した。可視光全域をカバーする標準LEDの開発は世界でも初めてと主張する。

 LED照明や有機EL照明は次世代照明として注目されている。これら照明の特性を評価するためには、評価対象の光源と、基準となる標準光源を比較して、光の波長ごとの強度を高精度に測る必要がある。ところが、固体素子照明の特性評価に適した、可視光全域をカバーする標準光源がこれまでなかったため、正確な測定を行うことは容易ではなかったという。

 産総研と日亜化学工業の研究チームは、中心波長が異なる複数のLED素子と複数の蛍光体を用いることで、可視光の波長領域(380〜780nm)全体で十分な光強度をもつ標準LEDの開発に成功した。


今回開発した標準LEDと特性評価方法の一例 (クリックで拡大) 出典:産総研

 従来の白色LEDだと、420〜720nmの波長領域以外では、光強度が十分に得られなかったという。今回開発した標準LEDは、中心波長が異なるLED素子を複数個組み合わせ、380〜430nmの波長領域における光強度を改善した。さらに、430nmより長い波長領域に対しては、「青」「緑」「赤」の蛍光を発する複数の蛍光体を組み合わせることで光強度を改善した。この結果、標準LEDのスペクトルは、380〜780nmの波長領域に広がり、可視光のほぼ全ての波長領域で十分な光強度を実現することができた。


開発した標準LEDのスペクトル(赤い実線)と従来の白色LEDのスペクトル(青い点線)の一例 (クリックで拡大) 出典:産総研

 開発した標準LEDは、本体の直径が62mm、発光部の直径は12mmである。また、発光部の温度を一定に保つため温度制御機構を実装した。この機能により、周囲温度に対する光強度の変動を0.01%/℃以下に抑えている。従来の白色LEDに比べて約20倍の安定性を実現した。開発した標準LEDは、点灯後に時間が経過しても光強度がほとんど変動しないことが分かった。


左は周囲温度の変化に対するLEDの光強度の変動、右は点灯時間に対する光強度の変動 (クリックで拡大) 出典:産総研

 日亜化学工業は、開発した標準LEDについて、量産化の準備を進めていく予定だ。産総研は、標準LED開発に用いたスペクトル精密測定技術をさらに発展させ、面発光光源や紫外光/赤外光領域における光源の評価技術について、研究開発を継続していく。

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