Qualcommにも真っ向勝負、手ごわい中国メーカー:製品分解で探るアジアの新トレンド(2)(2/2 ページ)
今回は、急成長する中国の半導体メーカーを紹介したい。これらのメーカーは、勢いや脅威という点では、米国を中心とする大手半導体メーカーのそれを上回るほどだ。Android Media Playerを分解しつつ、中国の新興半導体メーカーに焦点を当てていこう。
既に後継チップも
ちなみに、世界で最も早い時期に、LTE Cat 4(下り速度150Mビット/秒)対応のチップを搭載したWi-Fiルーターを市場に投入したのはHuaweiだが、このチップはQualcomm製ではなく、HiSilicon製である。同ルーターは、日本国内でもSoftbank(当初は、旧イー・モバイル)から、2012年に「Pocket WiFi LTE GL04P」として発売され、話題となった。
さらに、LTE Cat 4対応モデムを世界で初めて商用化したのはHiSiliconであった。HiSiliconはその後も成長を続け、今では、“Qualcommとほぼ同時期に、同レベルのチップセットを供給する”、トップメーカーの1つとなっている。
Hi3718のCPUは、ARM 「Cortex-A9」を採用したデュアルコア構成で、動作周波数は1.6GHz、GPUにARM 「Mali-400 MP4」を採用している他、Video Format(H.264 1080 60フレーム/秒など各種)、SATA、HDMI、USBなどのインタフェースを備えたシステムチップである。Hi3718 は、監視カメラなどで幅広く使われている「Hi3716」の後継チップだ。両者の差はGPU性能で、Hi3716にはARMの「Mali-400 MP2」が使われている。
実は、Hi3718の後継チップも既に市場に出回っている。同チップ「Hi3798」は、HiMediaのAndroid Media Player「Q5」に採用されていて、さらに進化を遂げている。Hi3798については、次回報告する予定だ。
Hi3718は、基本性能(CPUやGPU、インタフェース)だけを見ればそのままローエンドもしくはミドルエンド仕様のスマートフォンのアプリケーションプロセッサにも使える。
しかしHiSiliconは、Hi3718をスマートフォンのプラットフォームとしては活用していない。HiSiliconは、スマートフォン向けプラットフォームにおいては、モデムとアプリケーションプロセッサの1チップ化を進めているからだ。監視カメラとAndroid Media Playerでは、ともに外部(CMOSセンサーやネットワーク)から供給されるデータを画像処理するプロセッサなので、共通化できる。
64bitプロセッサが5米ドル?
図3は、中国Transmartが提供するスティックタイプのAndroid Media Player「Draco H3」である。2015年に発売された製品で、価格は40米ドルだ。H.265で圧縮した4K動画を見ることができる。コストパフォーマンスに最も優れた、4K再生可能なAndroidスティックとして、評判が高い製品である。
ここに搭載されているプロセッサは、中国Allwinner Technologyの「H3」である。Allwinner Technologyは2007年に創業を開始した、ファブレスのプロセッサメーカーだ。ARMコアを用いたメディアプロセッサの他、カーオーディオ、タブレット端末、ボードコンピュータなども提供していて、ターゲット市場を拡大しつつある。
Allwinner Technologyは、CPUの64bit化、ローコスト化では、おそらく最も脅威となる会社だろう。若干古い話だが、同社は「2015 International CES」で新チップを発表し、64bitプロセッサを5米ドルで提供すると宣言しているからだ(図3の右下を参照)。
中国のプロセッサメーカーは他にもRockchip、Spreadtrum Communications、Ingenic Semiconductor など大物がそろっている。これらの新興メーカーはどのように成長してきたのか、そして、どのようにチップ開発が可能になったのか――。今後はそれを報告していく予定である。
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