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二層シリセン合成に成功、大気中でも構造安定電子デバイスや二次電池電極の材料応用に期待

豊田中央研究所の中野秀之主席研究員らは、大気中で安定的に取り扱うことができる二層シリセンの合成に成功した。今回の研究成果は車両の走行制御用電子デバイスや二次電池の電極材料として応用が期待される。

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 豊田中央研究所の中野秀之主席研究員らのグループは2016年2月、大気中で安定的に取り扱うことができる二層シリセンの合成に成功したことを発表した。車両の走行制御用電子デバイスや二次電池の電極材料として応用が期待される。

 シリセンは、Si(シリコン)が蜂巣格子状に組んで形成した1枚の原子シートで、高速の電子移動度とエネルギーバンドギャップを併せ持つ。このため、エネルギーバンドギャップを持たない炭素の原子シート「グラフェン」の特性を越える新材料として注目を集めている。ところが、従来のシリセンだと大気中で酸化分解してしまうため、電子デバイスへの応用が難しかった。

 研究グループは、Zintlシリサイドの1つであるCaSi2の、Ca(カルシウム)層のみをフッ素化する合成手法を確立した。これにより、「二層シリセンの合成に世界で初めて成功した」と主張する。具体的には、出発原料となるCaSi2結晶を、フッ素を含むイオン液体中で加熱処理を行った。そうしたところ、フッ素のみが結晶内に拡散し、CaSi2Fx(0<x<2.3)の組成領域が生成されることを確認した。


シリセンモデル(a)と二層シリセンモデル(b)(黄色はシリコン、青色はダングリングボンド) 出典:豊田中央研究所

今回の合成手法で得られた新たな二層シリセンの概略図 出典:豊田中央研究所

 研究グループは、生成されたこの領域を走査透過電子顕微鏡で観察したところ、CaSi2に含まれる一層のシリセンが二層構造に転移していることが分かった。これは、Ca層をフッ素化(CaFx化)したことで、CaSi2内のシリセンは一層単独では存在することができなくなり、より安定な二層構造として再配列したものと解釈できるという。


二層シリセンの構造決定法 出典:豊田中央研究所

 しかも、二層シリセンはシリコンの四、五、及び六員環から形成される新規な構造であり、一層構造のシリセンと比較して、ダングリングボンド密度が75%減少した構造となった。二層シリセンでは75%のシリコンが4本の結合手で連結することにより、大気中でも比較的安定に取り扱うことが可能になることを確認した。さらに、光吸収測定データと電子状態密度計算などから、エネルギーバンドギャップが1.08eVに開いた間接遷移型であることも明らかにした。


二層シリセンの電子状態 出典:豊田中央研究所

 今回の研究成果は、英国時間2016年2月5日に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版において、「Monolayer-to-bilayer transformation of silicenes and their structural analysis」(一層シリセンから二層シリセンへの相転移とその構造評価)という論文タイトルで公開された。

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