イノベーションへの固執から脱却を図れ:勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(13)(3/3 ページ)
今回は、これまでの章を振り返りながら、「モノづくり」を、技術、製品価値、競争力などの視点でまとめてみたい。“イノベーション”、つまり技術革新に頼らずとも、価値のある製品を生み出し、競争力をつける方法は必ずあるということが、あらためて見えてくるはずだ。
事業創造と顧客創造
第11回では、基本的な経営戦略の話を盛り込みながら、自社の川下企業にいかに入り込むかについてお伝えした。皆さんの会社が部品サプライヤーとセットメーカー(完成品を作る)のどちらなのかによっても変わってくるが、前者の場合は「デザイン・イン」で、川下企業の上流プロセスに入り込み、川下企業にとって欠かせない存在の企業になることで優位に立つこともできる。
2015年10〜12月にTBSで放映されたドラマ『下町ロケット』で佃製作所が手掛けるバルブシステムがまさにそうで、帝国重工のロケットエンジンという製品に組み込まれることになり、一緒に製品開発をするに至る。これらの実現のためには、ドラマの場合ではたぐいまれなる技術力が求められるが、川下企業の業務プロセスや製品アーキテクチャを把握することも重要なのである。「単なるサプライヤー」から、「対等なパートナー企業」への脱却が図ることができ、取引の拡大をもたらすことになるのだ。
第12回では、自社の事業領域(事業ドメイン)をシフトすることで、新たな事業を生み出す画像センサーメーカーの事例を示した。
この第11回、第12回で示した部分は、先に述べた「価値獲得」に通じるものでもある。
ざっと駆け足でおさらいをしたが、およそ1年間にわたり連載した本コラムは次回(第14回)で最終回となる。次回は、この2年あまり、地方の製造業を見てきた中で、見えてきた根深い課題や国や行政としての企業支援の在り方など、バッサリと筆者なりに斬っていきたいと考えている。
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Profile
世古雅人(せこ まさひと)
工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。
2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱。技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。2012年からEE Times Japanにて『いまどきエンジニアの育て方』『“AI”はどこへ行った?』などのコラムを連載。
一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)で技術系ベンチャー企業支援と、厚生労働省「戦略産業雇用創造プロジェクト」の採択自治体である「鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト(CMX)」のボードメンバーとして製造業支援を実施中。
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