数字が暴く! “らくらくダイエット”の大ウソ:世界を「数字」で回してみよう ダイエット(26)(2/5 ページ)
今回は、私が連載当初から掲げてきたテーゼ「人類は、ダイエットに失敗するようにできている」を、目に見える形(=シミュレーション)で示します。前半では、このシミュレーションに使うパラメータを作るべく、ダイエットの苦痛を“定量化”します。なぜ、“苦痛”がパラメータなのか? ――それは、苦痛を伴わないダイエットなど、ダイエットとはいえないからです。数字が、それをちゃんと語ってくれるのです。
“苦痛”を定量化してみる
こんにちは、江端智一です。
今回は、前後半2回に分けて、ダイエットシミュレーター用の仮想人格(エージェント)”バーチャル江端”を使って、ダイエットの全工程の「見える化」を行います。
前半は、”バーチャル江端”に入力するパラメータの中でも、特に「苦痛の定量化」の検討も行い、後半ではシミュレーション結果を示します。
なお、”バーチャル江端”の推論エンジンは、『昔取った杵柄(きねづか)』で、ファジィ推論を使うことにしました*)。ファジィ推論を使えば、”バーチャル江端”を、自然言語(普通の言葉)と簡単な関数だけで実装できるからです。
*)というか、それ以外の方法を知らないだけですが(関連記事:「サンマとサバ」をファジィ推論で見分けよ! 史上最大のミッションに挑む)。
そして、この”バーチャル江端”を、「超シンプル体重変動シミュレータ(C言語版)」に組み込むことにしました(関連記事:万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”)
どんなパラメータを与えるか
では最初に、”バーチャル江端”に与えるパラメータ(変数)について検討してみたいと思います。
体重、BMI、摂取カロリー量(食事の量)、ダイエット経過期間を変数とすることは当然としても、やっぱり重要なのは、「苦痛の定量化」だと考えました。
ダイエットを止めてしまう最大の理由が、「腹が減った」(江端の調査では41%)だったからです(ダイエットは2カ月以上続かない!?)。
今回、苦痛の定量化(苦痛量)については、以下の単純な式を用いることにしました。
苦痛量=「現在の体重を維持する為に必要なカロリー量」−「ダイエット中の摂取カロリー量」
これは、比較的、理解しやすい数式だと思っています。
例えば、ダイエット開始前の私の体重は78kgあり、この体重を維持するには2370kcal(キロカロリー)が必要でした。これに対して、ダイエット中の私の摂取カロリー量は、1720kcalでしたので、その苦痛量は650(=2370cal[カロリー]−1720cal)となります。
現在、私は、ダイエットを停止し、体重66.5kgで体重を安定させるようにしております。つまり、必要なカロリー量と摂取カロリー量が平衡状態にあるわけですから、苦痛量は0(=2212cal−2212cal)ということになります。
実際、ダイエット前に比べて、食事の量は減りましたが、苦痛を感じることは、ほとんどありません。
ダイエット開始前が2370calで、ダイエット終了後は2212calなら、苦痛量は158になります。これは、たったコロッケ0.75個分のカロリー量(158cal÷207cal)にすぎません(万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”)。
だから、毎日、コロッケ1個程度をガマンすればダイエットはできる ―― などと、アホなことを記載しているダイエット本の、なんとまあ、多いことか。
確かに、毎日の食事から、コロッケ0.75個(分のカロリー量)を減らすだけでも、私の体重を10kg以上減らすことはできます。しかし、それには5年もの時間が必要になることを、そのダイエット本の著者たちは理解していないのです。
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