40GHz帯/60GHz帯協調による無線網の実証に成功:ソニー、KDDI研など4者(2/2 ページ)
ソニーやKDDI研究所などは2016年2月29日、40GHz帯と60GHz帯を協調させた次世代高速ワイヤレスアクセスネットワーク構築し、実証に成功したと発表した。
さらに4者は、60GHz帯の無線装置が隣接設置された場合でも、無線区間で混信することなく独立した装置として動作するシステム技術「GATE(Gigabit Access Transponder Equipment)システム」を開発。空間分離を可能にする高利得スロットアレイアンテナを用いて、アンテナの前方10m以上にわたり、電波が拡散しない筒状のサービスエリアを実現した。さらに、このサービスエリアをユーザーが短時間で通過するシナリオを想定して、通信可能になるまでのリンクセットアップ時間を2ミリ秒以下まで低減する無線通信制御システムを、60GHz無線モジュールのRF LSI/ベースバンドLSI上に実装して実現している。
同時に、60GHz帯ワイヤレスGATEシステムを迅速にかつ自在に配置しサービスエリアを構築するために、通信速度1Gbpsで伝送距離1km以上の40GHz帯無線伝送システムを協調動作させるシステムを構築し、実環境で実証した。40GHz帯の無線通信方式は同一周波数/同一偏波で同時双方向通信するDirectional Division Duplex (DDD)無線通信方式により実現。従来のFrequency Division Duplex(FDD)方式やTime Division Duplex(TDD)方式と比較して「原理的に2倍の周波数利用効率を実現した」とする。
さらに、40GHz帯システムはゲリラ豪雨に代表される局地的な豪雨では回線断が想定されるが、「降雨予測に基づいた経路制御技術」を開発し、あらかじめトラフィックの一部をう回させることにより、ネットワークとしての通信容量低下を抑える運用を行い、継続的な通信サービスを実現するという。
これらの技術を盛り込んだネットワークの試験に成功したことで、「今後増加が見込まれる移動体通信のトラフィックの一部を、周波数ひっぱく度の低い、ミリ波帯に迂回させることにより、混雑を回避できることが期待される」(4者)とする。なお、4者は、今回の開発成果を、2016年3月2〜4日に東工大大岡山キャンパス(東京都目黒区)で開催される移動通信ワークショップで公開実証する。
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