スマホ市場、今後5年は1桁台の成長に:Appleの新下取りプログラムは、市場に影響するのか
IDCの発表によると、スマートフォン市場の成長率は2020年まで、1桁台の成長が続くようだ。OS別に2015年を振り返ると、iOS端末にとっては記録的な1年となった。苦戦を強いられたのはWindows Phoneで、出荷台数は前年比で18%減となっている。
米国の市場調査会社であるIDCは2016年3月3日(米国時間)、スマートフォンの世界市場の動向と、OS別のシェアランキングを発表した。IDCによれば、同市場が2桁の成長率を実現するのは、2015年が最後の年になるようだ。
2015年通年におけるスマートフォンの出荷台数は14億4000万台で、2014年に比べて10.4%の増加という結果になった。IDCは最新の予測で、2016年の出荷台数は15億台で、2015年比で5.7%増になるとしている。これ以降は、出荷台数が2020年に19億2000万台に達するまで、1桁台の成長が続くとIDCはみている。
地域別では、新興市場であるインド、インドネシア、中東、アフリカなどで堅調に成長するようだ。一方で、成熟市場の米国、中国、欧州では、2015年に既に成長率が1桁台になっている。IDCでモバイル機器市場の分析を担当するRyan Reith氏は発表資料の中で、「これらの国々におけるスマートフォン市場の低迷は、Appleや、ハイエンドのAndroid端末を提供するメーカーにとって大きな打撃になるだろう」と説明している。
Appleは2016年2月、新しいアップデートプログラム「Trade Up With Installments」を発表した。旧世代の「iPhone」を下取りして、その下取り価格を新しく購入するiPhoneの代金から差し引き、残金を24カ月間で分割払いするものである。Reith氏は、Trade Up With Installmentsプログラムは、ただでさえ流動的なスマートフォン市場の変動を加速させることを狙うものだろうと分析している。
OS別では、Windows Phoneが苦戦
IDCは、併せてOS別の予測も発表した。Android端末の出荷台数は、2015年の11億7000万台から、2020年は16億2000万台に増加する見込みだ。主流となるのはローエンドの端末である。2015年の出荷数のうち、400米ドルをハイエンドの端末が占める割合は、14%に過ぎなかった。大手メーカーと地元メーカーによる価格競争も激化する見込みだという。
IDCは、「Appleにとって2015年は記録的な年だっただろう」と述べている。iPhoneの出荷台数は2億3150万台に上った。これは、2014年比で20.2%の増加となる。スマートフォン市場全体の増加率の約2倍となる値だ。さらに、Appleの平均端末販売価格は、2014年の663米ドルから、2015年は713米ドルとなった。IDCは、2016年のiPhoneの出荷台数は横ばいとなる見込みだが、特に米国では、Trade Up With Installmentsプログラムによって、2017年には再び増加傾向になると予測している。
Windows Phone端末にとっては、2015年も苦戦した1年だったようだ。2015年の出荷台数は前年比18%減となる1110万台に減少。市場に投入されているWindows Phone端末のうち、およそ95%はMicrosoft(Nokia)製だ。スペイン バルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC) 2016」(2016年2月22〜25日)では、Microsoftのパートナー企業から新しい端末が幾つか発表されたが、これらのパートナー企業が、Windows Phone端末の提供についてどの程度本気なのかは、定かではないと、IDCは分析している。
OS | 2016年 | 2020年 | 年間平均成長率 (16〜20年) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
出荷数(百万台) | シェア | 成長率 | 出荷数(百万台) | シェア | 成長率 | ||
Android | 1254.6 | 82.6% | 7.6% | 1624.4 | 84.6% | 4.6% | 6.9% |
iOS | 231.2 | 15.2% | −0.1% | 269.0 | 14.0% | 3.2% | 3.0% |
Windows Phone | 23.8 | 1.6% | −18.5% | 17.8 | 0.9% | −5.7% | −9.4% |
その他 | 9.5 | 0.6% | −15.1% | 9.2 | 0.5% | 4.8% | −3.9% |
合計 | 1519.0 | 100% | 5.7% | 1920.4 | 100% | 4.3% | 6.0% |
出典:IDC |
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