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キャッシュの基本動作:福田昭のデバイス通信 ARMが語る、最先端メモリに対する期待(7)(3/3 ページ)
今回は、キャッシュメモリの基本動作について解説する。基本動作は、大きく分けて2つある。メインメモリからデータをキャッシュラインにコピーする「アロケーション」と、特定のキャッシュラインからデータを追い出して“空き”を作る「エビクション」だ。
キャッシュとメインメモリのデータ書き込み方式
キャッシュとメインメモリにデータを書き込む方式には、2つの選択肢がある。1つは、キャッシュにデータを書き込むとともに、メインメモリ(外部メモリ)にもデータを書き込む方式だ。ライトスルー方式と呼ぶ。ライトスルーは比較的簡素な方式であり、追加の回路規模は小さくて済む。ただし低速のメインメモリにアクセスするため、データの書き込みが頻繁に発生するとCPUの処理性能が著しく低下してしまう。
これに対してデータの書き込みをキャッシュだけにとどめておくのが、ライトバック方式である。この方式だと、データの書き込みが頻発しても処理性能の低下はほとんど起きない。そしてキャッシュラインを追い出す直前に、データをメインメモリにコピーする。このためキャッシュラインには、書き込みがあったかどうかをチェックするビットを設けておく。書き込みがなかった場合は、メインメモリへのコピーは実行しない。
(次回に続く)
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