GoogleのAIに望むこと――“人間を賢く”:囲碁対局では3連勝したが(2/2 ページ)
Googleの人工知能(AI)「AlphaGo」は、韓国のトップ棋士と対戦し、3連勝した。囲碁や将棋、チェスなどにおいてAIがいずれ人間に勝つであろうというのは、誰しもが予想していたことだろう。だが筆者にAIに望むのは、「人間よりも賢くなること」ではなく、「人間を賢くしてくれること」である。
“スマート化”に覚える違和感
このような現代社会において、GoogleのAIが囲碁の世界チャンピオンに勝利する*)ことはショックを受けるようなことなのだろうか。私たちは皆、AIが勝利するのは時間の問題だということを分かっていたはずだ。
*)2016年3月14日(米国時間)、第3局まで連勝したAlphaGoは、第4局でLee氏に敗北した。
GoogleのDeepMindチームが囲碁の勝負に勝ったとしても、別に驚くようなことではない。世間がこの対局の結果に熱い反応を示さないのは、当然のことだ。
人間とロボットの戦いは、映画や小説の中でも繰り広げられている。架空のストーリーながら、時として真実も描かれる。少なくとも、「人間は、ロボットが次にどんな勝負を挑んでくるのかにおびえている」という部分に関しては真実といえるだろう。
最近のハイテク業界では、あらゆるものをスマート化させる技術の話題が目立つ。スマートホーム、スマートカー、スマートウォッチ、スマートトイレ……何でもかんでも“スマート化”である。“スマートではないもの”の話は聞かない。筆者の身の回りのモノは全て、どんどんスマートになっている。むしろ、スマートになっていないのは筆者くらいだ。
だがふと、疑問に思う時がある。われわれは、モノをスマート化できるほど、スマートなのだろうか、と。人間は、(家事でも運転でもそうだと思うが)何か物事を行う際、自分でやらなければ覚えないし、その物事の仕組みも学ぶことができない。スマート化によって、こうしたスキルを失う可能性は否めないのだ。物事の仕組みがまったく分からなくなる日が来てしまうのではないかと思うと、怖さも感じる。AIには、“われわれが”スマートになれるように進化してほしいものだ。
GoogleのDeepMindは、この考えをどう思うだろうか。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AI活用の本命はビッグデータなのか?
人工知能(AI)は、登場初期の黄金期と、1980年代前半のブームを除き、長く「冬の時代」が続いてきた。だがここに来て、ようやくAIが本領を発揮できそうな分野が登場している。それが、クラウドやソーシャルメディア、スマートフォンなどのモバイル端末の普及により、にわかに注目を集めるようになったビッグデータだ。 - AIの“苦悩”――どこまで人間の脳に近づけるのか
人工知能(AI)の研究が始まった1950年代から、AI研究の目的は「人間の大脳における活動をいかにコンピュータ上で実現させるか」だ。大手IT企業や大学の努力によって、AIは少しずつ人間の脳に近づいているのは確かだろう。一方で、自然言語処理の分野では、“人間らしさ”を全面に押し出した「人工無能(人工無脳)」も登場している。 - 人間の脳が握る、デバイス低消費電力化の鍵
ウェアラブル機器に欠かせない要件の1つに、低消費電力がある。「第2回 ウェアラブルEXPO」のセミナーに登壇した日本IBMは、超低消費電力のコンピュータとして、人間の”脳”を挙げ、IBMが開発中の「超低消費電力脳型デバイス」について語った。 - ルネサス 自動運転車の頭脳となる次世代SoC発表
ルネサス エレクトロニクスは2015年12月2日、車載情報システム向けSoC「R-Carシリーズ」の第3世代品を発表した。2018年以降に市販される自動車への搭載を見込んだ製品群。第1弾製品として同日、サンプル出荷を開始した「R-Car H3」は“自動運転時代のSoC”と位置付けたハイエンド品で、最先端となるTSMCの16nm世代FinFET+プロセスを採用し、高性能な処理能力を盛り込んだ。