認知症徘徊者をWi-SUNで見守る、千葉で模擬訓練:「直接、声をかけることにつながってほしい」(2/2 ページ)
情報通信研究機構(NICT)とNTT東日本は2016年3月27日、920MHz帯を使用する無線通信規格「Wi-SUN」を活用した認知症高齢者を見守るシステムの模擬訓練を千葉県香取郡神崎町で実施した。EE Times Japanでは、神崎町社会福祉協議会の担当者に、模擬訓練の成果と課題を聞いた。
スマホ用のルーターやアプリも
今回の模擬訓練は、固定設置型のルーターだけでなく、スマホ用のルーター(モバイルWi-SUNルーター)と見守りアプリを活用したという。スマホは、インターネット接続とGPS機能を標準装備しているため、アプリサーバと連携することで、近隣の捜索協力依頼情報を自動的に受け取ることができる(図1)。
モバイルWi-SUNルーターでビーコンを受信した際、その情報が捜索対象者のものかどうかを自動判別して、アラートとして表示することも可能である(図2)。
「直接、声をかけることが何より必要」
EE Times Japanでは、神崎町社会福祉協議会に模擬訓練の成果を聞いた。神崎町社会福祉協議会によると、もともとNTT東日本と「テレビ電話を使った買い物支援」を行っており、高齢者支援にICTをもっと活用できないかという思いが、訓練の背景にあった。
担当者は、「認知症などで徘徊をする高齢者に何より必要なのは、直接“声をかけてあげること”。それだけで、消息が不明になったり、命を失ったりすることが減少するだろう。しかし、なかなか直接声をかけるのには戸惑ってしまう。ICTを活用することで、少しでも“声をかけること”につながればと思い、今回の模擬訓練に至った」と語る。
訓練の成果としては、歩いているときに、検知された捜索対象者役の情報がスマホに音で通知されるため、捜索協力者が「近くにいるから探してみよう」と行動に移る様子が見られたという。課題としては、「年数が経てば慣れると思うが、年配者の中には、スマホのアプリを操作することに戸惑う人も多かった」と語った。
今回用いたWi-SUNを活用した見守りシステムに関して、NTT東日本の千葉事業部によると「他の地域での活用などは現時点でなく、今後の展開も不明である」とした。
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