産業向け半導体市場が好調、LEDがけん引役に:米国の勢い強く
産業用半導体市場の成長が堅調だ。特にLEDは、LED照明の人気の高まりもあり、産業用半導体市場の最大のけん引役として期待されている。
米国の市場調査会社であるIHSによると、世界の産業用半導体市場は2014〜2019年に年平均成長率(CAGR)8%で伸び、595億米ドル規模に達する見込みだという。
同社によれば、特に米国において設備投資の増加や経済成長が続いていることから、今後、産業用半導体の需要が増大していくとみられている。産業用半導体の世界需要をけん引する主な要素としては、民間航空機やLED照明、デジタルビデオ監視装置、温度調節装置、トラクション装置、医療用機器などが挙げられる。
IHSによると、米国は、2015年に消費された産業用半導体全体の30%を占め、今後も世界最大の産業用半導体市場としての位置付けを維持していく見込みだ。また、世界第2位の産業用半導体市場は中国で、消費量全体の16%を占めている。
IHS Technologyで産業用半導体部門担当アソシエートディレクターを務めるRobbie Galoso氏は、発表資料の中で、「米国は、General Electric(GE)やUnited Technologies、Boeingなどの世界最大の産業用機器メーカーを抱えているため、米国の産業用半導体メーカーにとって、経済成長の堅調な伸びや設備投資の増加は朗報だといえる。産業用機器の堅調な需要により、今後、産業用半導体製品の中でも最も規模が大きい光半導体とアナログチップ、ディスクリートの3分野において、売上高が増加していくだろう」と述べている。
けん引役はLED照明
中でも、産業用半導体市場の最大のけん引要素になると期待されているのが、LED照明だ。IHSによれば、世界中でLED照明の人気が高まっていることから、LED市場は2019年に、145億米ドル規模に達するとみられている。
マイコン市場は、2014年には44億米ドル規模だったが、主に電力効率とインテグレーションの向上により、2019年には63億米ドル規模に成長する見込みだという。
IHSの予測によれば、特定用途向けアナログIC市場は今後、特に工場オートメーションや電力、エネルギー、照明などの分野で力強く成長するとみられ、2019年には産業用半導体市場において47億米ドル規模に達する見込みだ。Texas InstrumentsやAnalog Devices、NXP SemiconductorsといったメーカーのパワーマネジメントICやデバイス統合ICなどが、主要なけん引役を担うとみられる。
今後、工場オートメーションの分野において、エネルギー効率を重視する方向へと政策転換が進んでいくことから、ディスクリートパワートランジスタやサイリスタ、整流器、パワーダイオードなどに向けた半導体市場が、2019年に78億米ドル規模に成長する見込みだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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