「計測器メーカーとしてゼネラリストではいけない」:日本NI新社長 コラーナ マンディップ シング氏(2/2 ページ)
システム開発ソフトウェア「LabVIEW」を中核とする計測プラットフォームを提供する日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)。同社では2016年4月1日付で代表取締役が交代し、池田亮太氏に代わって、コラーナ マンディップ シング氏が就任した。
NIにおけるAPAC市場
一方の池田氏は今後、APACでの事業を拡大をすべく、問題点の洗い出しに注力し、どこに何をどう売るか、という基本に立ち返ったマーケティング戦略を展開していくという。
NIのAPAC担当バイスプレジデントを務めるChandran Nair氏は、「NIにとってAPACは、最も速い速度で成長している市場だ」と説明する。NIの売り上げ比率では、28%を占める。Nair氏は「ここで言うAPACとは、東は日本から西はミャンマーまで、南はオーストラリアとニュージーランドを含んでいる(インドは入らない)。さまざまな国が混ざり合う面白い市場だ」と続ける。
「日本は研究開発の基盤が充実していて、制御システム、自動車、通信といった分野に強く、NIの注力分野によく合致している。中国は生産工場が多いので、われわれはテスト装置で貢献できる。韓国は、自動車分野も強い一方で工場も多く、ちょうど日本と中国の合間のような市場である。東南アジア諸国は、製造とエネルギーの分野で伸びている」(同氏)。
Nair氏は、「これらAPACの国々に共通項としてあるのは、IoT(モノのインターネット)だ」と述べる。多数のセンサーを同期させてデータを収集する技術、データを送信する通信技術、収集した膨大なデータを解析する技術など、IoTを取り巻く技術は、NIが得意とする分野でもある。Nair氏は、IoTというトレンドによってAPACでもNIが大きく成長することが可能だということを示唆した。池田氏も、「IoT関連では、(NIが多くの開発実績を持つ)コンディショニングモニタリング向け製品を全面にアピールするなど、明確にマーケティング戦略を打ち出したい」と述べている。
プラットフォームの計測アプローチは、着実に浸透
池田氏は、代表取締役に就任していた15年間を振り返った。
最初のころは、モジュラー式の計測器を否定されることも多かったという。だが、モジュールというパーツを組み合わせた計測システムだけでなく、そこに(パートナーなどの)“人”を加えたエコシステムを活用することで、ハードウェアだけを売るディストリビュータではできない販売戦略を手掛けてきたと、池田氏は述べる。それによって「当初に比べると、計測プラットフォームの拡張性の高さを認めてくれる顧客が増えたのではないか」と語った。
池田氏は、「自動車業界を例に挙げると、現在は、(自動車に数多くのセンサーやマイコンなど電子部品が搭載されていることから)自動車と電子機器の境目がどんどん曖昧になっている。そうした中、(機械系やセンサー類、通信系など)必要なテストを全て行いたいという場合に、モジュラー式の計測プラットフォームが強さを発揮できる」と続け、プラットフォームベースの計測アプローチが、各業界に浸透していることを強調した。
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