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Microchip、退職条件でAtmel従業員と対立3時間超にわたる話し合いも

Dialog Semiconductorへの対抗買収によってAtmelを手に入れたMicrochip Technologyだが、Atmelの従業員の退職条件で問題が発生しているようだ。

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退職条件の相違

 Microchip Technology(以下、Microchip)は2016年4月4日(米国時間)、Atmelの買収手続きを完了した。だが、Atmelの米国の従業員は、約束されていた退職金を満額受け取ることはできないようだ。EE Timesは、この処遇に不満を持つある従業員からこの情報と機密文書を入手し、MicrochipのCEO(最高経営責任者)を務めるSteve Sanghi氏に真偽を尋ねた。


Microchip TechnologyのCEOであるSteve Sanghi氏

 Sanghi氏は、「Atmelの役員会は、同社の社員に対して退職条件に関する文書を配布していたが、そこに記された条件はこれまでの買収案件では考えられないような内容だった。さらに、Atmelの役員会は、この退職条件をMicrochipの役員会に伝えていなかった。Microchipの役員会は、この条件を飲むことができないが、その代償として自らにも1四半期間、50%の減給を課すことを決めた」と語った。

 半導体業界では、売上高の減少とコストの高騰の中、大型のM&Aが続いている。今回の情報発覚は、こうした状況の中、半導体業界が直面している厳しい現実を浮き彫りにした形となった。

 Sanghi氏は先週、シリコンバレーでAtmelの従業員と3時間半に及ぶ話し合いを持った。この中で、Sanghi氏は、Atmelの役員会が退職条件の詳細をMicrochipの役員会に伝えていなかったことを非難した。MicrochipはAtmelの従業員に対して、Microchipの決定に同意するという文書にサインすれば、Atmelが約束していた退職金の半分の額を支払うと提案したという。

 EE Timesに情報提供したAtmelの従業員によると、Sanghi氏は、「サインしてもしなくてもよい。ただし、サインしない場合は法廷での判断となり、われわれが勝訴した場合は退職金が全く支払われない可能性もある」と言ったという。また、燃え盛る家を何度も例に出して、「私を助けるか、家が全焼して売却されるかのどちらかだ」とも言ったという。Sanghi氏は、この例え話をこれまでに4、5回程しているらしい。

 Atmelは、合併に関するFAQ(よくある質問)を同社の従業員に配布していたが、それには「Microchipが退職条件に同意した」と書かれていた。

 全従業員が参加した話し合いの場で、このFAQについて指摘したところ、Sanghi氏は、「FAQはAtmelの元CEOが作成したもので現体制では無効だ」とはねつけたという。先の従業員は、「Sanghi氏は、FAQのことは聞いていないようなそぶりだったが、そんなことは関係ない。同氏は責任を追及されていた」と話している。

友好的なムードは漂わず

 Sanghi氏と従業員の話し合いの場では談笑もみられたものの、終始、敵対的な雰囲気が漂っていたという。1回目の解雇は既に開始されていて、解雇されたメンバーにはAtmelのバイスプレジデント全員が含まれるという。

 EE Timesが連絡を取った別の従業員は、この話し合いについて違った見解を述べている。彼は、「3時間半のミーティングなんて経験したことがない。長すぎる」としながらも、「話し合いのポイントは幾つかあったが、Microchip側は問題に対処するためにできるだけのことはしているという印象を受けた」と話した。

 Sanghi氏はEE Timesに対して、「Atmelの多くの従業員はMicrochipにだまされたと感じているようだが、われわれもAtmelにだまされたと感じている。私はAtmelの従業員のために戦うつもりで、彼らと話し合いを重ねている。4月12〜13日中に従業員に退職条件の草案を配布し、今週末までに全ての問題を解決するつもりだ」と語った。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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