TSMCの2016年Q1、苦戦するも同年後半には回復か:10nm/7nmプロセス開発は順調
世界最大手のファウンドリーであるTSMCだが、2016年2月に発生した地震の影響などもあり、苦戦しているようだ。ただし、10nm/7nmプロセスの開発は順調だとしている。
TSMCが、2016年第1四半期の業績発表を行った。現在、業界全体が伸び悩んでいる状況にあるが、同年後半にはそこから抜け出せるとみているようだ。
TSMCは、ファウンドリー市場全体の54.3%のシェアを握り、圧倒的な優位性を確立している。しかし、米国の市場調査会社であるGartnerによると、TSMCのファウンドリー事業部門における売上高成長率は、2014年には16%だったが、2015年には4.4%に減少したという。
半導体業界はこれまで、ファウンドリー部門によって成長がけん引されてきたが、現在では売上高が低迷する事態に直面している。その要因としては、半導体チップの過剰在庫が生じていることの他、モバイル/コンピューティング製品やタブレット端末の需要が伸び悩んでいることなどが挙げられる。TSMCは、「当社の対前年比の売上高成長率が回復し始めるのは、ハイエンドスマートフォンの需要が増加するとみられる、2017年後半以降になる見込みだ」述べている。
TSMCの共同CEO(最高経営責任者)であるC. C. Wei氏は、2016年第1四半期の業績発表の場で、「2016年後半には、成長率を高めることができるとみている」と述べている。
同社は、最大の顧客としてAppleを抱えているが、今後しばらくの見通しはあまり明るくないようだ。
スマートフォン、無線インフラ、ゲーム分野がけん引役か
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、「世界マクロ経済が不安定な状態にあるため、当社の2016年のスマートフォン成長率予測を8%から7%に下方修正した。また、PCの成長率についても、前回予測の−3%を−6%に、タブレットは−7%を−9%に、それぞれ下方修正している。スマートフォンの他、無線インフラ、ゲーム機器などの分野は、引き続き成長を遂げていく見込みだ」と述べている。
TSMCの予測によれば、2016年の世界半導体市場の成長率は約1%伸び、ファウンドリー市場は約5%増加する見込みだ。TSMCの売上高成長率については、5〜10%の増加を見込んでいるという。
TSMCの2016年第1四半期における決算報告は、対前年比で減少する結果となった。売上高は、前年同期比12.8%減となる61億4000万米ドルで、利益は、同18%減となる648億ニュー台湾ドル(20億米ドル)だった。
業績低迷の背景には、不可抗力事象による影響もある。2016年2月6日に台湾南部で地震が発生したことを受け、TSMCの粗利益は2.2%減少した。2016年第1四半期のウエハー出荷量(12インチウエハー換算)は205万6000枚で、前年同期の228万7000枚から減少する結果となった。
地域別でみると、TSMCの対前年比売上高が増加したのは、アジア太平洋地域と中国だけだった。アジア太平洋地域の売上高は12%から16%に、中国は8%から12%に、それぞれ増加したという。
TSMCは、「2016年も引き続き、90億〜100億米ドル規模の設備投資を行うことにより、高性能ジオメトリチップ市場におけるシェア拡大を目指していく」と繰り返し主張している。
7nmプロセスも「順調」
業界アナリストによれば、TSMCは先端技術の開発を加速させているという。TSMCによれば、2016年第1四半期に10nmプロセスのテープアウトが完了したと、顧客から報告を受けているという。さらに、7nmプロセスについても「順調」だとしている。10nmプロセスに比べてロジックの密度は60%上がり、消費電力は40%減少すると見込んでいる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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