iPhoneの出荷台数、初の減少傾向に:2007年に登場して以来
アナリストらの予測によると、Appleの「iPhone」は、スマートフォンの象徴的存在として2007年に市場に登場して以来、初めて出荷台数が減少に転じる見込みだという。
Maybank Kim Eng SecuritiesのアナリストであるWarren Lau氏は、2016年4月18日付のレポートの中で、「Appleは、2016年4月25日に行う予定の第1四半期の業績発表において、iPhoneの出荷台数が初めて減少に転じたことを明かすのではないだろうか。そしてこの減少傾向は、第2四半期以降も加速していくとみられる。Appleだけでなく、Samsung Electronicsをはじめとする他の大手メーカーも、スマートフォンの需要減少に直面しているようだ」と述べている。
Lau氏は、EE Timesのインタビューに対し、「通信事業者(キャリア)が補助金を削減しているために、先進国市場における買い替えサイクルが長くなっていることなどから、今後はプレミアムセグメントの出荷台数が伸び悩むだろう。一般的にハイエンドスマートフォンは、品質が極めて高いため、最大3年間は使い続けることが可能だ。目新しい機能も特になく、革新的技術の開発ペースも遅れていることから、消費者たちが、以前のように先を争うようにスマートフォンをグレードアップしたいとは思わなくなっている」と述べている。
エコシステムにとっては潜在的なリスクに
iPhoneの出荷台数が減少すれば、時価総額世界一であるAppleのエコシステムに属するメーカー各社にとっては、潜在的なリスクが生じることになる。Lau氏の予測によると、2016年のiPhoneの出荷台数は、前年比で15%減少する見込みだという。そうなれば、Appleのサプライヤーにとっては、受注量が減少し、平均販売価格(ASP)に対する価格圧力が強まっていくことになる。
Lau氏は、「Appleは2017年の新型モデル向けに、新しいディスプレイ技術やケーシングデザイン、チップ部品などを採用するとみられる。このため、既存のサプライチェーンも大きく変化するだろう。既存サプライヤーの多くは、取引を打ち切られ、新しいメーカーによって置き換えられることになる」と述べる。
既に影響を受け始めているメーカーもあるようだ。最大顧客であるAppleに大きく依存しているTSMCは2016年4月14日(台湾時間)、2016年のスマートフォン成長率予測を8%から7%に下方修正している。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、同社の2016年第1四半期の業績発表の場において、「今後のスマートフォン市場は、中国で『4G+』が導入されたり、中国のキャリアによる補助金が増加したり、新興市場において3Gから4Gへの移行が進んだりといったことが、成長要因になるだろう」と述べている。
TSMCは、Appleだけでなく、中国メーカーにもスマートフォン向けチップを供給している。
新興市場の成長が鍵
Lau氏をはじめ、アナリストたちによると、ハイエンドスマートフォンの需要が低迷している中で、HuaweiやMeizu、Oppoなどの中国メーカーは、市場シェアを拡大しているという。ただしLau氏は、「これらのメーカーは上場企業ではないため、実際に利益を上げているのかどうは判断できない」と指摘している。
台湾の市場調査会社であるTrendForceによると、2016年第1四半期におけるスマートフォンの世界出荷台数は2億9200万台で、前年同期比で1.3%減少した。
スマートフォン市場をけん引してきたAppleやSamsungにも、以前ほどの勢いはみられない。そのため、同市場の成長は中国やインド、その他新興市場のメーカーにかかっていると、TrendForceは述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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