STマイクロ 不振の要因はアナログ/MEMS事業:2016年1Qも赤字計上
STMicroelectronicsは2016年第1四半期(2016年1〜3月)業績で4100万米ドルの純損失を計上した。業績不振の背景には、これまで希望の光と目されてきたMEMS事業の低迷があるようだ。
CEO退任のうわさも
欧州でトップ3に入る半導体企業であるSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス/以下、ST)は低迷と赤字が続いているが、その要因はアナログ&MEMS事業にあるようだ。
STは2016年第1四半期(2016年1〜3月)決算の中で、売上高が16億1000万米ドル、純損失が4100万米ドルだったことを明らかにした。売上高は前年同期比で5.4%減少した。
STのCEO(最高経営責任者)を務めるCarlo Bozotti氏は間もなく在任期間を終えるとうわさされている。だが同氏は、決算報告のために設けられたアナリストとの電話会議ではこのうわさについてはコメントしなかった。
スマホ市場の飽和で“希望の光”から一転
STは2009年にEricssonと共同で携帯電話機向け半導体企業ST-Ericssonを設立したが、経営不振により2013年に合弁を解消した。この影響から、過去数年間にわたり損失が続いている。この間、アナログ&MEMS事業はSTにとって希望の光だった。同社は、スマートフォンの慣性センサーで複数のデザインウィンを獲得し急成長する市場で利益を上げた。だがここ最近は、いくつかのデザインウィンを失ったことや、家電製品に搭載されるMEMSのコモディティ化が進み価格が低下したことなどから、同社のMEMS事業は低迷している。それと同時に、スマートフォン市場も市場が飽和状態に達し軟調が続いている。
STは、スマートドライビングとIoT(Internet of Things)に注力するために、2016年第1四半期に同社の事業をオートモーティブ&ディスクリートグループ(ADG)と、アナログ&MEMSグループ(AMG)、マイクロコントローラ&デジタルICグループ(MDG)の3つの製品グループに再編した。ADGとMDGの売上高は前年同期比で横ばいだったが、AMGは同17.1%減となる3億6900万米ドルだったという。
「回復の兆候が現れ始めた」
Bozotti氏は、「数四半期の市場低迷の後に迎えた2016年第1四半期は、業界に回復の兆候が現れ始め、全ての地域で受注が改善した。自動車および産業分野は特に堅調だった」と述べている。
同社は、2016年第2四半期の売上高は前期比で5.5%増〜3.5%減の間で推移すると予想している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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