微細化、「3nmまでいくのでは」:「ムーアの法則」の生みの親に対しIMEC(2/2 ページ)
「ムーアの法則」の生みの親であるGordon Moore氏が、ハワイの自宅でベルギーIMECのビデオインタビューに応じ、未来の技術に関する自身の見解や、1965年以来半導体業界に大きな影響を及ぼし続けてきたムーアの法則の今後について語った。87歳となった同氏は、謙虚なエンジニアはいつまでも自分を笑いの種として語れることを示してみせた。
FinFETからナノワイヤトランジスタへ
Van den Hove氏は、「トランジスタの微細化はますます困難になってきている。もはや旧世代技術のように、自動的にメリットを享受することは不可能だ。しかし、今後数十年の間は、ムーアの遺産を維持するための解決策があることを確信している」と述べる。同氏が率いるIMECには、長年にわたり半導体技術の進展をサポートしてきた実績がある。
Van den Hoven氏は、「エンジニアたちは、半導体の微細化だけでなく、さまざまな種類の技術を活用する必要がある。未来のトランジスタは、既存のFinFETから、水平型のナノワイヤトランジスタ、垂直型のナノワイヤトランジスタへと変化することで生み出されるかもしれない。今後10年間は、引き続き精力的な取り組みが求められ、少なくとも3nmプロセスに到達するのではないだろうか」と述べている。
同氏は、「ノード間の移行が緩やかになるにつれ、フラッシュメモリで使われているような3次元設計が、SAM(Sequential Access Memory)や、FPGAのようなロジックICにも適用されるようになっていくだろう。長期的には、シリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Vias)による論理積層技術や、オンチップ光学などが登場するとみている」と述べる。
EUVが必須に
さらに、「中期的には、EUV(極端紫外線)リソグラフィー技術が不可欠となるだろう。過去12カ月間の動きから、EUVによる製造が間もなく開始すると確信している。IMECはこれまで、リソグラフィー技術の先駆的企業にサポートを提供してきた」と述べている。
“ポストCMOS”のデバイスや、新しいコンピュータアーキテクチャなどのシステムレベルのイノベーションも、今後の進捗を促進する役割を担っていくとみられる。同氏は、IMECが検証を進めている新しい研究プログラムの1つとして、量子コンピューティングを挙げている。
同氏は、「今後長年にわたり、さまざまな基礎研究に取り組んでいく必要がある。ムーアの法則を延長していく上で、幅広い選択肢が用意されている」としている。
同氏は一例として、IMECがサポートを提供したPacBioについて取り上げた。PacBioが開発したDNAシーケンサーは、ムーアの法則を超えるペースでコスト削減と性能向上を実現したという。「現在、完全なヒトゲノム配列を解析するためのコストは、数千米ドルほどになったが、まだ一般の人々には手が届かない。IMECは、PacBioとの協業により、次世代チップの開発に取り組んでいる」(同氏)。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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