1つの画像素子で可視光と近赤外光を同時に撮影:車載カメラや監視カメラなどに有効
東京工業大学(東工大)工学院 システム制御系の奥富正敏教授らは、1つの撮像素子でカラー画像と近赤外線画像を同時に撮影することができるイメージングシステムのプロトタイプを開発した。
東工大とオリンパスが共同開発
東京工業大学(東工大)工学院 システム制御系の奥富正敏教授らとオリンパスは2016年6月、1つの撮像素子でカラー画像と近赤外線画像を同時に撮影可能なイメージングシステムのプロトタイプを共同開発したと発表した。
デジタルカメラなどに搭載される一般的なイメージセンサーは、単板撮像素子とRGBのフィルターをアレイ上に配置したカラーフィルターアレイ(CFA)を組み合わせて、カラー画像を撮影している。
夜間に強い近赤外線カメラ
これに対して最近は、可視光(カラー情報)に加えて近赤外光の画像を同時に取り込み、リアルタイムに画像処理を行う要求が高まっている。近赤外線カメラであれば、夜間撮影が可能となるため、車載カメラや監視カメラなどの用途で注目されている。
しかし、これまでのカメラは、可視光のカラー画像、または近赤外線画像のどちらか片方しか撮影できなかった。これらを同時に撮影するためには、複数台のカメラを用意するしかなかった。最近は単板撮像素子を用いて、カラー画像と近赤外線画像を同時撮影する方式も研究されている。CFA内に近赤外線フィルターを追加する方法である。原理的には従来方式とほぼ同じサイズやコストに抑えることが可能とみられているが、新たな画像処理アルゴリズムの開発などが課題になっていたという。
研究グループは今回、単板撮像素子とCFAを用いた方式で、高画質なカラー画像と近赤外線画像を同時に撮影可能なイメージングシステムのプロトタイプの開発に成功した。新たに開発したシステムは、近赤外線フィルターを追加したCFAを備える撮像素子と、撮像データをリアルタイムで処理する画像処理システムで構成されている。
近赤外線フィルターの配置を工夫
特に、CFAは近赤外線フィルターの配置を工夫した。また、画像処理システムは、デモザイキング処理や色補正処理などをリアルタイムで行うことにより、撮影したカラー画像と近赤外線画像を、リアルタイムにディスプレイ出力することが可能である。これらの開発成果により、高精度なイメージングシステムを実現することが可能になったという。
開発したシステムは、リモートセンシングやセキュリティ装置、ロボティクス、農業機械、医療機器などに適用可能な次世代画像センシング技術とみられている。研究グループは引き続き、実用化に向けたシステム設計や、今回の技術を実装したカメラモジュールの開発を行っていく予定だ。
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