カルシウムイオン電池の優れたサイクル特性確認:青色顔料を電極に用いて
豊橋技術科学大学の研究グループは2016年6月、カルシウムイオン電池の電極材料に青色顔料を用いて充放電評価を実施したところ、充放電サイクル性能が優れていることを確認したと発表した。
プルシアンブルー類似体電極
豊橋技術科学大学の東城友都助教らの研究グループは2016年6月、次世代電池の1つであるカルシウムイオン電池の電極材料に顔料であるプルシアンブルー、プルシアンブルー類似体を用い充放電試験を実施したところ、充放電サイクル性能が優れることを確認したと発表した。
カルシウムイオン電池は、可動イオン1価のイオンを用いるリチウムイオン電池に対し、同2価のイオンを用いる。そのため理論上、リチウムイオン電池の2倍の容量を実現できるとされる。加えて、カルシウムの埋蔵量はリチウムより多く、融点も高いなどの利点から、リチウムイオン電池よりも低価格で、高い安全性の電池を実現できる可能性があるとされる。
ただ、カルシウムイオン電池の実現には、カルシウムイオンを可逆的に挿入、脱離できる電極材料が少ないという課題をクリアする必要がある。カルシウムイオンのイオン径は112pm(ピコメートル)で、リチウムイオンの76pmよりも大きいためだ。
そうした中で、豊橋技術科学大学の研究グループでは、大径のイオンを挿入、脱離できる電極材料として、プルシアンブルー、プルシアンブルー類似体を提案。すでにカルシウムイオンと同程度のイオン径を持つナトリウムイオンを用いて、プルシアンブルー類似体電極の電気化学特性を有機/無機電解液中で評価。ナトリウムイオンの可逆的な挿入、脱離を確認している。
3サイクル目以降、クーロン効率90%で一定に
今回、研究グループは、プルシアンブルー類似体電極にカルシウムイオンが可逆的に挿入、脱離するかどうかの評価をカルシウム系有機電解液を用いて実施した。その結果、理論容量の半分程度に相当する40〜50mAh/gの可逆容量を確認できたという。加えて、充放電サイクル試験を行った結果、3サイクル目以降のクーロン効率(充電容量[カルシウムイオン脱離量]/放電容量[カルシウムイオン挿入量]×100)は、約90%で一定となったという。研究グループでは、「クーロン効率すなわち、サイクル性能は優れていることが確認された」と結論付けている。
サイクル性能が優れた理由としては、X線回析(XRD)、X線光電子分光法による調査の結果、「プルシアンブルー類似体の壊れにくい構造と良好な電荷バランスに由来していることが判明した」とする。
研究グループでは、「カルシウムイオン電池の最適な電極材料として、プルシアンブルー、プルシアンブルー類似体を提案したが、(理論容量の半分程度にとどまった)可逆容量の向上については、さらなる研究が必要。今後はリチウムイオン電池を超えるカルシウムイオン電池の材料研究を引き続き進めていく予定」とコメントしている。
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