FinFETの次なるトランジスタはナノワイヤ?:「ITF 2016」で語られた半導体の未来(4)
ベルギーで開催された「IMEC Technology Forum 2016(ITF 2016)」(2016年5月24〜25日)では、FinFETの次なるトランジスタとして、ナノワイヤが話題に上った。
ナノワイヤへの期待
IMECは、プロセス技術の開発からスタートした研究機関であるため、5nmあるいは3nmプロセス技術へとつながるアイデアを豊富に持っている。
IMECのプロセス技術部門でシニアバイスプレジデントを務めるAn Steegen氏は、GAA(Gate-All-Around)構造の一種である水平ナノワイヤが次の重要なトランジスタになると確信している。ナノワイヤを水平方向にスタックすることで、30〜50%の低消費電力化と高性能化を図れるとする。IMECは現在、第1世代の設計の検証を続けているという。
Steegen氏は「われわは、電力密度を管理するための新しい機能を常に必要としている。数年前にDVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)、現在はFinFET、将来的にはナノワイヤを適用していくことになると考えられる」と述べた。
III-V族化合物半導体への移行が進むのか
さらに、その次のステップになり得るのが垂直ナノワイヤだ。だが、Steegen氏は「垂直方向に向かうことは極めて破壊的」だとし、性能目標を達成するために、高い電子移動度を持つIII-V族化合物半導体への移行を余儀なくされる可能性があるという。
IMECは、電源電圧が0.5Vのデバイスに焦点を絞った研究で、III-V族化合物半導体を用いたn型FETがシリコンをしのぐことを示している。
GLOBALFOUNDRIESの最高技術責任者(CTO)であるGary Patton氏は、ナノワイヤには懐疑的だ。同氏は、5nmプロセスでは新しいタイプのトランジスタが必要になるだろうとしながらも、「ナノワイヤには多くの課題がある」と述べた。Patton氏が、FinFETの次なるトランジスタの候補として最も興味を持っているのは垂直FETだ。とはいえ同氏はすぐに「デバイスエンジニアはトランジスタのアーキテクチャに関心を持っているが、私は、インターコネクトの方に、より時間を費やしてきた」と述べた。
III-V族化合物半導体については、Patton氏はやや消極的なようだ。半導体部品として実用化できる時期を誰も予測できないとの見解を示した。
⇒「「ITF 2016」で語られた半導体の未来」連載バックナンバー
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Intelの10nmチップ、鍵はIII-V族半導体と量子井戸構造か
Intelは10年近くにわたり、量子井戸電界効果トランジスタ(QWFET)の研究を進めてきた。ある半導体アナリストは、Intelの10nmチップは、III-V族半導体、具体的にはInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)とGe(ゲルマニウム)を用いたQWFETになると予測している。 - 次々世代のトランジスタを狙う非シリコン材料(3)〜III-V族半導体の「新たなる希望」
前回は、ゲルマニウム(Ge)をチャンネル材料とするMOSFETの研究開発の歴史と現状を紹介した。今回はもう1つの材料であるインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)である。InGaAsの歴史と背景にあるIII-V族化合物半導体とともに、研究開発の状況を解説する。 - 半導体業界、“細分化”から“統合”へ
半導体業界の歴史において、2015年ほど大規模な企業統合が繰り返された年はなかっただろう。ムーアの法則を維持すべく新しい技術を生み出してきた半導体業界では、どちらかといえば、企業は“細分化”する傾向にあったからだ。 - FinFETの父、「半導体業界は次の100年も続く」
“FinFETの父”と呼ばれる研究者のChenming Hu氏は、Synopsysのユーザー向けイベントで、「半導体業界が次の100年も続くと確信している」と述べ、業界の未来が決して暗いものではないと主張した。同氏は新しいトランジスタのアイデアとして、NC-FET(負性容量トランジスタ)についても言及した。