産総研、2030年に向けた研究戦略を策定:Society 5.0を世界に先駆けて実現へ(2/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)は、2030年に向けた産総研の研究戦略を策定した。2030年の産業像や社会像を見据え、「超スマート社会(Society 5.0)」の実現など、大きく4つの研究目標を定め開発に取り組む。
サステナブルな産業・社会の実現
目標の2つ目が、「サステナブルな産業・社会の創出」である。化石燃料や希少資源に依存せず、無駄や廃棄物を徹底的に排除することで、環境負荷の少ない社会を実現していく。このために取り組むべき主な研究課題として6つのテーマを挙げた。
「再生可能エネルギーの適切な普及拡大」に向け、極めて高効率な太陽光発電技術、大規模深部地熱発電の高効率/低コスト化技術、再生可能エネルギーの普及促進のためのスマートグリッド技術、などの開発に取り組む。この他、「地熱や海洋といった未利用エネルギーの開拓、実用化に向けた研究」「二次電池の高容量・低コスト化技術、液体燃料を直接利用可能な燃料電池、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といったパワー半導体材料とデバイスおよびその応用技術などを含む省エネルギー/蓄エネルギーの技術」「水素を効率的に製造し、貯蔵/輸送および利用するための技術」「環境保全と両立する資源開発/循環利用を可能とする技術」「ヘテロマテリアルのプロセス技術や接合/接着技術」などの開発に取り組む。
新産業や健康・長寿命社会の実現
目標の3つ目は、「新産業や健康・長寿命社会の創出」である。その原動力となるのは、従来にはない高機能な材料やデバイス、生理活性物質、細胞/動植物を作り出す技術だという。
ここでは、柱となる研究として7つのテーマを挙げた。「単一の電子、光子、原子を検出する極微小/超微細計測技術」「AI技術を活用した新機能材料とそのプロセス技術」「ナノテクノロジーを駆使した有機/無機材料や、飛躍的に特性を向上させたナノカーボン材料など、これまでにない高付加価値素材の開発」「センサーやアクチュエーターなど原子/分子制御による新原理/新機能デバイスの開発」「ゲノム編集などバイオデザイン技術の確立とそれを適用したものづくり」「DNAやRNA、たんぱく質などあらゆる物質の構造やダイナミクスを解析するための分析技術の開発」そして、「バイオデバイスを用いた健康の可視化/分析技術の開発」である。
安全、安心な産業・社会の確保
目標の4つ目が「科学技術を基盤とした安全、安心な産業・社会の確保」である。巨大自然災害の予測や減災、資源の安定供給、環境や健康に対する影響度の軽減などを想定して研究を行う。
具体的には、「巨大地震や火山噴火など自然災害リスクの評価と低減につながる技術の開発」「健康リスクの評価、老朽化した社会インフラ対策などに必要となる先端計測技術の開発」「地質情報の可視化などリスク削減対策に必要な技術開発」そして、「災害時などに食料や水などを安定供給するための新素材や保存/輸送システムの開発」などに取り組む計画である。
産総研は、「その先の2050年を見据えれば、社会構造はもっと大きく変化し、必要とされる科学技術も大きな変革を遂げる。その時代の社会状況の変化を的確に把握し、産業科学技術の研究開発において、これからも中心的役割を果たしていく」とコメントしている。
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