ルネサス成長へ材料はあるが「意欲足りない」:ルネサス 社長兼CEO 呉文精氏(4/4 ページ)
経営危機を脱し、成長フェーズへと移ろうとしているルネサス エレクトロニクスの社長兼CEOに就任した呉文精氏。「ワールドカップ優勝、世界市場で勝つ」とグローバルな半導体メーカーとしての成功を目標に掲げる同氏にインタビューした。
内製、外部委託の切り分けを見直し
――生産体制の見直しは今後行うのか。
呉CEO 今、内製、外部委託の切り分けを見直している。12インチウエハー対応製造ラインで生産する製品については、一部、ファウンドリーでも製造できる体制を整えているが、社内特有のプロセスについては、外に出せない、ないし、外に出すと高くつく。BiCDプロセスのように、圧倒的な競争力を持つプロセスであれば、自社で作れるし、外に出すべきではない。とはいえ、(独自技術を使った)マイコン用の28nm フラッシュ混載対応プロセスは既に、外部委託する準備を整えており、全てが全てを内製するわけではない。プロセス技術を理解した上で、外部委託も活用していく。
(12インチ対応で主力製造拠点である)那珂工場(茨城県ひたちなか市)をはじめ、どう効率的に運用するかということが課題だ。とはいえ、これまでのルネサスの工場が抱えた課題は、固定費をどう抑えるかという課題だったが、今後は、どう那珂工場を戦略的な工場にしていくかということが課題になる。
現状、工場は与えられたものに対応するマインドが強い。「この製品の需要はこれぐらいの見込みだから、収益性はこうなる」というような計画が出てくるが、本来はそうではない。わが社というよりも、生産本部が、那珂工場をどういうような工場にしたいか、そういう絵を描いて、それに向けて生産品目や、設備を変えていく計画を立てていきたい。だから、今後は工場に対する、設備投資もしていく。生産がわが社の競争力の源泉となるようにやっていく。
課題は「成長への意欲」
――これから成長を目指す上で、ルネサスの1番の課題は?
呉CEO 成長するためのピースはそろっている。その中で1番の課題は、成長に対する意欲が足りないことだ。
過去3年間、踏み外せば破綻すると切り詰めてきた。切り詰めてきたことは正しいことだが、そのために、成長への意欲が失われてきた。だから、それをいくつかの分野で、“優勝するんだ”という風に、ちょっとリスクを背負って投資するということに慣れていない。
投資は、ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンかのどちらか。これまでのルネサスはハイリスクハイリターンの投資は一切できなかった。確実に需要があって、あまり設備投資せずに済んで、あまり大もうけできないけれど、大丈夫なところしか投資できなかった。
私も一発で会社がつぶれる投資はやるつもりはないが、ある程度の大きさのリスクを、1つでは失敗するとまずいので、リスクの大きさに応じて、3つや4つのリスクを取れるようにして、3つ、4つのそれぞれで優勝するようにやっていく。
――成長への意欲を喚起する方法は?
同じ高さで相手の目を見て真剣に話をするということをどれだけ広く、長くできるかかと思う。いくつか仕組みを設けて、やっていく。コミュニケーションは効率的にできないが、さまざまな場面を活用して、シンプルでクリアなメッセージを何度も言っていく。要は、シンプルに明快に同じことを言い続けるかだろう。
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