IoTと自動車分野で積極投資――u-blox:NB-IoT対応モジュールも(2/2 ページ)
順調に売上高を伸ばすスイスu-blox。成長を後押しするのはIoT(モノのインターネット)と自動車だ。IoT向けでは、標準化が最終段階にあるセルラーIoT規格NB(Narrow Band)-IoT対応モジュールを「世界で初めて」(同社)発表するなど、積極的に製品を展開している。
5Gは、まだバズワード
LTEモジュールも手掛ける同社だが、5G(第5世代移動通信)についてはもう少し市場の動向を見るという。「個人的には5Gは、まだバズワードの域を出ていないと思う。5Gは標準化の途中にあり、ユースケースや要素技術についてさまざまなアイデアはあるが、明確なものは何もない」(Seiler氏)
自動運転では数センチレベルの測位精度が必要に
自動車向けでもu-bloxの製品がカバーできる領域は広い。中でも、Seiler氏が「ヒットした製品」と強調するのが、2015年に発表し、2016年4月にサンプル出荷を開始したIEEE 802.11p対応通信モジュール「THEO-P1」である。V2X(車車間/路車間通信)市場を狙って投入されたTHEO-P1は、車載品質規格AEC-Q100に準拠した製品だ。
Seiler氏は、車載市場向けの測位およびタイミングデバイス/モジュールでは、より高い精度を求められていると述べる。「具体的にはセンチメートルの精度で位置が分かるような測位モジュールが求められている。自動運転車の実現に向け、自分のクルマと相手のクルマの位置をより正確に把握する必要があるからだ」(同氏)。これを象徴する製品が2016年2月にサンプル出荷を開始したGNSSレシーバーモジュール「NEO-M8P」である。固定局と移動局間で通信し補正を行うGNSS RTK(リアルタイム・キネマティック)により、数センチレベルの測位誤差で高精度に測定することが可能だ。
Seiler氏は「自動車は、カメラやセンサーが搭載されたり、インターネット接続機能が追加されたりするなど、電子化が進む一方だ。その先には自動運転の実現がある。われわれは、IEEE 802.11p対応通信モジュールやGNSSレシーバーモジュールなど、自動運転に不可欠な技術を提供することで、同市場でのポジションの強化を図っていく」と語った。
この他、2016年6月には、外部信号不要(アンテザード)推測航法(UDR)を搭載した小型レシーバー「EVA-M8E」を発表した。7×7mmと小型な点が最大の特長だ。GPS、GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS、SBASの各衛星をサポートしていて、車両追跡デバイスに適しているという。
売上高の3分の1は中国から
u-bloxにとって、日本を含むアジアは重要な市場だ。同社のシンガポール法人でゼネラルマネジャーを務めるAdrian Tan氏は「u-bloxにとって中国は最大の成長要因」だと話す。Seiler氏によると、u-bloxの売上高の30%は中国での売上高だという。日本法人の売上高は非公開だが、中国に次いで第2位としている。「中国、日本、韓国はいずれも自動車が成長市場で、これはu-bloxの戦略に合っている」(Tan氏)。日本においては、QZSS(準天頂衛星システム)をサポートする次世代製品も開発していく予定だ。
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