TeslaとMobileyeの関係は終わったのか:自動運転中の死亡事故を受け(2/2 ページ)
Tesla Motorsの「Model S」で、自動運転中に死亡事故が発生した。同社にビジョンプロセッサを提供していたMobileyeはこれを受け、Teslaへのチップ供給は現行の「EyeQ3」で終了する予定だと発表した。MobileyeのCTOは、半導体メーカーと自動車メーカーの関係性は変わる必要があると述べている。
「EyeQ3」チップでの食い違い
TeslaとMobileyeの亀裂は、Teslaが2016年6月末に、死亡事故について発表した直後に公になった。
Teslaが事故に関する発表を行った後で、MobileyeとTeslaはそれぞれ声明を出している。
驚いたことに、両社が発表した声明では、TeslaがMobileyeのEyeQ3をModel Sで採用した目的に関する説明内容が大きく食い違っていた。
Mobileyeの見解によれば、「Teslaは、Mobileyeの半導体チップを、その設計意図に反する方法で使用した」という。一方Teslaは、「当社のオートパイロット機能は、自社開発システムであり、Mobileyeのビジョンプロセッサは、Teslaが融合した数々の外部開発技術の中の1つにすぎない」との見方を示している。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、EE Timesの取材に対し、「この問題の中心にあるのは、“Teslaが、自社開発の緊急自動ブレーキ(AEB)システムに、どのようにEyeQ3を搭載したのか”という疑問だ」と述べている。
Shushua氏はカンファレンスコールの中で、「Mobileyeは今後も、Teslaの既存のオートパイロット機能向け製品を維持し、サポートを提供していく。近い将来、ハードウェアを変えずに、衝突回避機能と自動操縦機能の最適化に向けた複数の機能を、大幅にアップグレードしていくつもりだ」と述べている。
Mobileyeの代替メーカーは
それにしてもTeslaは今後、Mobileyeから見放された後、どのメーカーからビジョンプロセッサを調達するつもりなのだろうか。
The Linley GroupのDemler氏は、「Teslaが組み込みビジョンプロセッサを独自開発しているといううわさがあるようだが、それが量産にたどり着くまでにはずいぶんと時間がかかるだろう」と述べている。同氏は、「Teslaは、コックピットディスプレイにNVIDIAの『Tegra』プロセッサを採用しているという関係から、NVIDIAに救いの手を求めるのではないだろうか」と付け加えた。
さらに、「このようなシナリオのマイナス面としては、Tegraプロセッサは、バックミラー搭載システムに採用するには消費電力が大き過ぎるため、別のシステム設計が新たに必要になるという点が挙げられる。またTeslaは、NXP Semiconductorsに目を向けて、旧Freescale Semiconductorのチップを使用するかもしれない。しかしこれもまた、Tegraほどではないにしろ消費電力が非常に大きいという問題がある」とも述べている。
IHS Markitの車載用半導体担当シニアアナリストを務めるAkhilesh Kona氏も同様に、ビジョンプロセッサの代替SoC(System on Chip)サプライヤーとして、NXPやTexas Instruments(TI)の名前を挙げている。ただしこれらのメーカーは、Mobileyeが持っているような画像処理ソフトウェアを持っていない、と同氏は指摘する。「Teslaが他のSoCサプライヤーに移行した場合、画像処理ソフトウェアを自社で開発するのは極めて難しいことになるだろう」(同氏)
De Ambroggi氏は、「TeslaとMobileyeの関係は、終わらないという可能性もある」と述べる。「MobileyeはTeslaとの関係を完全に終わらせたというよりも、条件を設定してある程度線引きをしたのではないか」(De Ambroggi氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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