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コラム

TV事業に固執し続ける日本メーカー4年ごとに期待を抱く(2/2 ページ)

日本国内のTV出荷台数は大幅に減少しているにもかかわらず、いつまでもTV事業に固執し続ける日本の電機メーカー。オリンピックなどの世界的な祭典に期待をかける傾向があるようだ。

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黒字への転換

 日本の大手電機メーカーの多くが、2016年第2四半期におけるテレビ事業部門の業績を黒字回復させている。

 ソニーのホームエンタテインメント&サウンド事業部門担当執行役EVPを務める高木一郎氏は、2016年8月1日に、「ソニーの2016年のテレビ販売台数全体のうち、4Kテレビが占める割合は38%に達した」と述べている。日本経済新聞によると、ソニーは2017年に、この割合を60%まで高めたい考えだという。

 パナソニックは、2016年4〜6月期におけるテレビ出荷台数が、前年同期比で18%増加したという。4Kテレビの販売台数が増加したためだとしている。

 東芝の4Kテレビ販売台数は、一部の新型モデルで前年比の3倍に増加した。シャープでは、4Kテレビの販売台数が以前の予測を上回り、当初の目標だった40%を超えたという。

 日本の小売業者は、大型かつ高精細の4Kテレビでオリンピックを視聴したいと切望する日本の消費者たちに、大きな期待を賭けている。

 筆者のような、日本に住んでおらず、基本的に倹約主義で、アーリーアダプター(初期採用者)でもないという消費者にとっては、これは非常に驚くべきことではないだろうか。NHKが試験放送を行った以外に、4K技術の導入をアピールする放送局が全くいないからだ。

 実際のところ、日本の放送局が4Kコンテンツの放送を開始できるのは、早くても2018年以降になる予定だという。

 この他にも、テレビ関連で明らかになった情報がある。もし筆者が、4Kテレビを衝動買いしたとしても、テレビ放送で4Kコンテンツを見ることはできない。なぜなら、4Kテレビチューナーを取り付ける必要があるためだ。

 総務省は2016年6月末に、消費者向けに発表した通知の中で、「数年前から市場に出回っている4Kテレビで、超高精細4K放送を視聴するためには、専用の4K受信機が必要だ」と述べている。または、4Kテレビ放送のことは忘れ去って、動画配信サービス「Netflix」に加入し、今使っている4Kテレビで4K番組を視聴するという方法もある。

 しかし、良いニュースとしては、4Kテレビを手頃な価格で入手できるようになってきたという点が挙げられる。市場調査会社であるGfK Japanによると、4Kテレビの平均販売価格は、ここ数週間で17万7000円まで下がってきているという。

8Kは?

 既存の2Kデジタル放送が1920×1080のインターレース方式であるのに対し、NHKの8K映像「スーパーハイビジョン」は、7680×4320のプログレッシブ方式だ。色域規格「Rec. 2020」に準拠し、10/12ビット深度に対応、フレームレート60P/120Pを達成する。

 4Kの画素数は3840×2160で、既存の2K HDTVの4倍となる。

 NHKは、「4Kをうまく実現できたため、ここで立ち止まる必要はない」と考えているに違いない。

 米国のデジタルテレビ放送規格の次世代バージョン「ATSC 3.0」に照準を合わせているTVメーカーやプロバイダーにとっては、4Kの高解像度は将来的に実現可能だといえるだろう。

 しかし、これについては気にする必要はない。ソニーの高木氏が2016年8月1日に、「2020年の東京オリンピックに間に合うように8Kテレビを市場投入する」という、大胆な計画を発表したのだ。


「CEATEC JAPAN 2015」にて、NHKが展示したHDR対応の8K TV

 筆者は決して、4K/8K放送をめぐる今後の展望に異議を唱えているのではない。公的資金を受けたNHKの野望に足並みそろえて従い続ける、日本のTVメーカーのことを心配せずにはいられないのだ。

 最終的に、世界的なHDTVをめぐる戦いで勝利を収めたのは、NHKのアナログハイビジョン技術ではなく、デジタル処理された多重信号でオーディオやビデオを送信するという、General Instrumentが考案した手法だった。デジタルTVは、世界中の放送業界、通信業界、民生機器業界に大きな影響を与えた。8K TVはデジタルTVの延長線上にあると考えると、8K TVが大きなインパクトをもたらすとは考えにくいのである。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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