働く人はAIで幸せになれる? 体験者に聞いてきた:日立製作所が発表して話題に(4/4 ページ)
日立製作所は2016年6月、AI技術を活用し、働く人々の幸福感向上に有効なアドバイスを、各個人のデータから自動で作製する技術を開発し、日立グループの営業部門に所属する約600人に対して、実証実験を開始したと発表した。今回、実証実験に参加した2人にインタビューを行った。
「アドバイスの根拠が分からない」
EETJ 今回のAI技術に関して、課題はどこにあると思いますか?
加藤氏 現状のウェアラブルセンサーでは全く心配はないが、プライバシーといった観点で、ビジネスや社会の中でどれだけ認知してもらえるが課題と考える。
西山氏 営業側の視点になってしまうが、アドバイスに対する“根拠”の部分が明確になると納得感がある。根拠が明確だと、行動にも移しやすいだろう。
EETJ 今後、根拠まで提示することは考えられるのでしょうか。
西山氏 AIが大量のデータを分析し、アドバイスをしているため、根拠の説明がどこまで可能になるかは分からないが、納得感を得るための方法は今後考えていくようだ。
EETJ ありがとうございます。最後に、今回の実証実験を通して、AIに対する認識は変わったかどうか、感想などもありましたら教えてください。
加藤氏 第2次AIブームまでは人間が把握できていることを機械にもやらせるといった発想だった。現在の第3次AIブームは、ビッグデータ処理の技術が発達したことで、今まで知らなかったことや、気付かなかったことが見えてくるようになる。先ほども述べたように、私たちはAIによって見えてきたことに、支配される必要はない。見えてきた新しい事実によって、選択肢が増えることが重要だと考えている。
西山氏 加藤氏と同意見だ。私たちでは今まで分からなかったことがAIを通して分かるようになるので、これからも活用すべきと思っている。
取材を終えて
加藤氏の話にもあったが、AIが働く人々の幸福度を高めてくれるのではなく、AIからのアドバイスが新しい気付きを得る1つのきっかけとなり、どうすれば良くなるかを考え、行動に踏み出すことが仕事の充実や幸福度の向上につながるのだと感じた。
また、AIの話になると「機械に人間が使われる状態」「コンピュータに操られている」などの声が付きものだが、その心配がないことも分かるだろう。日立製作所の矢野和男氏がインタビューで述べた、「コンピュータがアドバイスしているように見えるが、全て過去のエビデンス(証拠、根拠)が基になっている」という言葉からも分かる。
しかしながら、AIが普及することに抵抗感がある人は多いかもしれない。今回話を聞いた加藤氏と西山氏は、ITを商材とした部門に所属することもあり、AI導入に関して積極的だったといえる。今回の実証実験の結果は、研究者の分析を加えた中間レポートとして、各企業に提供されるようだ。また、新しい発表などが出てきたら取材を進めたい。
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