ニュース
幽霊や極低温原子、FPGAを手軽に使って処理:ミリ波レーダーと量子コンピュータ(4/4 ページ)
大量のデータから目的の情報を得る、極めて複雑な設定条件から正しい組み合わせを見つける。ミリ波レーダーや量子コンピュータの開発課題だ。National Instruments(NI)の年次カンファレンス「NIWeek 2016」(テキサス州オースチン)では、このような開発事例を3日目の基調講演において複数紹介した。
ゲームを使って集合知を得る
Sherson氏の研究テーマは量子コンピュータを実現するハードウェアだけではない。「ソフトウェア」の開発も進めている。「原子の最適な制御条件を探るためにスーパーコンピュータで総当たりを試みることもできだろう。だがそのためには原子状態の場合分けが必要だ。これが難しい。われわれは個々人が持つ問題解決アルゴリズムを調べ、適用することを考えている。先ほどの原子の跳ねを模したゲーム(図11)を考案し、多数の方に解いてもらう。さらに原子の跳ねとは一見関係のない『テトリス』のようなパズルゲームを解く様子を観察することも進めている」(同氏)。
多数のゲームプレーヤーの状況をクラウドで集め、最適なアルゴリズム、すなわちコグニティブプロファイルを得るというチャレンジだ。
ミリ波レーダーと量子コンピュータ、今回紹介した2つの事例は、いずれも米NIが設けた「NIWeek 2016 Engineering Impact Awards」を受賞したもの。2016年8月4日に受賞者が披露したプレゼンテーションとインタビューの内容を紹介した。
【取材協力:ナショナルインスツルメンツ】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- これからも技術者が使いやすいオープンなシステムを
National Instruments(NI)の年次カンファレンス「NIWeek 2016」が、テキサス州オースチンで開幕した。1日目の基調講演では、NI設立40周年、LabVIEW誕生30周年を迎え、これまでを振り返るとともに、NI製品群を使った超高速処理によって可能になった最先端の事例を紹介した。 - 産業用IoTに狙いを定めるNI、主力の「LabVIEW」プラットフォームを武器に
計測器メーカーのNational Instruments(ナショナルインスツルメンツ)は、産業用IoTに狙いを定めている。もともと得意分野である状態監視システムだけでなく、機器に実装してスマート化を図る組み込みモジュールの展開にも力を入れる。どんな用途にも同じプラットフォームで対応できることが最大の強みだ。 - 産業用IoT向けイーサネットは次世代へ
産業機器分野においてIoT(モノのインターネット)を普及させる手段の1つとして、「IEEE 802.1 TSN(Time Sensitive Networking)」と呼ばれる次世代規格の標準化が進んでいる。標準イーサネットの拡張版である同規格は、コストや相互運用性などの面でメリットを生み出す可能性がある。 - 量子コンピュータ実現に向け大きな前進――超大規模量子もつれの作成に成功
東京大学大学院工学系研究科の古澤明教授らは、光での量子もつれ生成を時間的に多重化する新手法を用いて、従来に比べ1000倍以上となる1万6000個以上の量子がもつれ合った超大規模量子もつれの生成に成功したと発表した。古澤氏は「量子コンピュータ実現に向け、大きな課題の1つだった『量子もつれの大規模化』に関しては、解決された」とする。 - 量子テレポーテーションの心臓部をチップ化――量子コンピュータ実用化へ「画期的成果」
東京大学の古澤明教授らの研究グループは、量子テレポーテーション装置の心臓部となる「量子もつれ生成・検出部分」を光チップで実現することに成功した。量子テレポーテーションの手法を用いて量子コンピュータを実現できることを示した。 - 非対称な光学迷彩装置を理論的に実証、透明人間も可能?
理化学研究所(理研)と東京工業大学の共同研究チームは、非対称な光学迷彩を設計する理論を構築した。新たに実証した理論では、外部からは光学迷彩装置内にいる人間や物体は見えないが、内部からは外部を見ることが可能となる。